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2022年7月19日 (火)

新しい弦

午後の演奏会を終えて帰宅してから、新しい弦、ドミナントプロの下2本をまず張ってみた。

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タングステン巻きのC線はスピロコアのそれと似ている。G線はタングステン巻きではなく、音色はかなり落ち着いて、暗めだった。
トマスティーク社のチャートの通り、どちらもスピロコアよりほんの少し落ち着いた音色。https://www.thomastik-infeld.com/en/new-releases/dominant-pro/cello

翌朝、D線とA線も張ってみた。予想に反して、D線は昔からあるドミナントに似ている。公表されている張力より弱い感じで、弾いた感触は少し頼りなく、音色はかなり明るい。
A線は張力が強く、へなちょこの僕には、8度の重音を押さえるのがきつくなる感じだった。

G線の音色が暗く、こもった感じなのに、D線はとても明るい。なじめば違う面が出てくるのかもしれないけれど、一本おきにC/D線が明るく、G/A線が暗い。ちぐはぐな感じがする。
これは個体差で、たまたま僕の買ったものがそうだったのだろうか。全体の響きも伸びず、僕の楽器に合わないと感じ、元の弦に戻してしまった。
もしかして僕の気付かなかった素晴らしい面や、可能性があるのかもしれないし、違う楽器に張ったら別の発見があるのかもしれない。

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下の2本は、スピロコアより落ち着いた感じで弾きやすいから、あの弦のじゃりじゃりした感じが気になる時は、良い選択になるような気もする。

何も変えなくても、楽器や弓、人間は毎日、時として驚くほど違い、そして日々変化していく。
4月から使っているのは、上2本をヤーガー、下2本はスピロコアの、弱い方の弦。ずいぶん以前にもこの組み合わせを試したことがあったのだけれど、その時はどこにも支えがない感じで、ふにゃふにゃだった。楽器も人間も変わったのかもしれない。

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新しい弦は、基本的に張力の強いものが多い。
強い弦はわかりやすいけれど、僕は、強さを弦に求めるより、楽器に強さが生まれてくるような弦を使ったり、弾き方を工夫する方が良いのでは、と思っている。

ヤーガー+スピロコアの組み合わせの長所の一つは倍音の多さだと思う。弾いている本人が感じているよりずっと、響きの成分が多いかもしれない。
ヤーガーのドルチェには、ミディアムの弦の、突っ張るような神経質さがない。これを生かすために下2本も弱いものにしている。

強い弦を張ると、どうしても響きが抑えられてこもる感じになり、細かいニュアンスも失われがちで、発音も遅くなる。
英語で "projection" と言うのだろうか、音がぱっと遠くまで広がる感覚はとても大切だと思う。

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新製品のG/C線はほとんどが径の細いタングステン巻き。タングステンには独特の音色があり、あまり好きではない。発音の良さや、鋭い音色など、利点はあるのだけれど。
太い弦は、今や少数派だろうか。

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M君が、ヨーロッパのとても有名なオーケストラのコントラバスセクションは、オイドクサ(ガット弦)を使っている人が多い、と教えてくれた。
チェロのオイドクサは、かなり柔らかい感じだけれど、コントラバス弦はそうでもないらしい。実際に音を聴かせてもらうと、力強く、響きも深かった。
今年の後半、空気が乾いてきたら、また使ってみよう。

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