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2022年9月 1日 (木)

新しいアンプ

アンプを新しくした。

様々なアンプとスピーカーの組み合わせを聴き、僕の予算ではこれ、と思うものを選び、少し前に届いた。家のLS-3/5(古典的な小型スピーカー)がすっきりと抜け良く、鳴っている。
これまで使っていたのは、ユニークでシンプルなアンプ。一度Kさんがバージョンアップをして下さったけれど、25年以上、電源を入れたまま、ほとんど何も問題がなかった。
でも使っているうちに、もう少し音が広がっても良いのでは、と思うようになった。

僕は音源に入っている音をできるだけもらさず、克明に聴きたい。奏者がどのように弾いているのか、大編成のオーケストラだったら、どのようなバランスで、どのようにそれぞれの楽器から音が出ているのか、聴きたい。こういう聴き方をするのは職業上の理由もあると思う。そして、実際に舞台の上で鳴っている音は、心地よい、というよりは凄まじい、と言った方が近い。
けれどBGMのように音楽を聞きたい人には、そうした音は、聞き疲れするものかもしれない。

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オーケストラの同僚を含め、演奏家で再生装置に興味を持つ人は少ないように思う。イヤホンをつないだスマートフォンで、音楽のストリーミングサービスにアクセスすれば、曲を知ることはできる。でも少し手をかけたシステムのスピーカーから聞こえる音楽は、情報量が圧倒的に多く、楽しい。

店頭に並ぶアンプを様々聴き比べると、大きく違った。雑誌で高く評価されているものでも、ずっと同じ調子に聞こえたり、実際の楽器の音に何か余計なものが盛られて、厚ぼったくなっている、と感じたりすることがあった。

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試聴に使ったのは、何度も聴いてきたマーラーの5番。冒頭のトランペット一本の音色や響きがどのように聞こえるか、打楽器の音の立ち上がりはどのくらい鋭いのか、最初の大音量のテュッティではどのくらい音が広がるのか、コントラバスの音がどのくらいチェロと分離して、鮮明に力を持って聞こえるか、金管の中でホルンがどのくらい聞こえるか。弦楽器の甘く、退廃的な弱音の音色がどのくらい感じられるか、銅鑼や大太鼓の消えていく音色がどのくらい聞こえるか・・・。
一方の極端から、もう一方の極端へ。振幅がとても大きく、おそらく機器への負担は大きく、能力がわかりやすい。

アンプによって驚くほど違ったのはピアノの音。ベートーヴェンの後期のソナタを聴いたのだけれど、次の音が出ているのに、前の音の響きが残っていて混ざり、どの音も同じように聞こえてしまうアンプと、ピアニストがどのように鍵盤に触れているのか、そして打鍵の瞬間の音の立ち上がり方だけでなく、その後の弦の振動がどのくらい聞こえるのか、そうしたことがよく感じられるものとがあった。

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僕が選んだのはNmodeのX-PM5。オーディオ雑誌のレヴュー記事を見たら、実に素っ気なく扱われていて、不思議な感じがした。いくつかの店で様々なアンプ、様々なスピーカーの組み合わせで聴かせてもらい(ありがとうございました)、印象はいつも変わらなかった。
上を見るとキリのない世界だけれど、この値段帯では素晴らしいのでは、と思う。録音による音色や音場の広がりの差、アナログ録音の場合はノイズがどのくらい入っているのか、もよくわかるし、打楽器の音の立ち上がりの速さは痛快なほど。

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このアンプが届いた頃、都響はクラウス・マケラの指揮でショスタコーヴィチやマーラーの最中だった。これまでになく、オーケストラがよく鳴っていた時で、リハーサルを終え、帰宅して新しい機器から出る音を聴くと、音数がずっと少なく感じられ、生のオーケストラから出ている音のすごさを実感した。

X-PM5の本体は小ぶり。地震の多いこの国で、しかも僕の小さな部屋に、重く大きなオーディオ機器は置きたくない。そして暑い季節には、筐体が熱を持たないことも良いと思う。(つづく)

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