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2022年12月

2022年12月30日 (金)

世界はどのように 2

映画「This is it」は、マイケル・ジャクソンが世界ツアーに出る前に行った、リハーサルの記録。(https://www.sonypictures.jp/he/933764)
プロのダンサーが多く参加しているのに、どうしても彼一人の動きに目が行ってしまう。驚異的な身体能力だ。
そしてリハーサルの経過を見ていて、この人には広い舞台の上で自分がどう見えているのか、自分や周囲の人たちがどう動いたら効果的に見えるのか、冷静に俯瞰できているのでは、と思うようになった。
(マイケル・ジャクソンについては様々なことが伝えられるけれど、このツァーが実現しなかったことを、僕は残念に思う。)

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以前、体操の内村航平さんを取り上げたテレビ番組が放映され、興味深かった。
鉄棒の、回転にひねりが加わった演技をする際、彼の額に小型カメラを取り付け、そこからの映像が画面に映し出された。それは猛烈なスピードで過ぎ去っていく光景で、僕には何のことかまったくわからなかった。
内村さんはその映像を見て、実際そう見えるし、その時の身体の状態もわかる、とのことだった。比較に別の体操選手で同じことをすると、彼は映像を見ても、何が起きているのかわからない、と言っていた。
空中で回った後、着地をぴたりと決めるためには、猛烈な速さで複雑な動きをする自分の身体を、常に的確に把握していることが大切なのだろうか。

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プールに行く。僕がするのは水浴びみたいなのものだけれど、時々上手に泳ぐ人がいて、見とれる。波がたたず、水しぶきも少なく、滑るようにスムースに、速く進んでいく。一方、パワフルだけれど、大きな水音をたて、水しぶきを上げ、あまり進まない人もいる。いったい何が違うのだろう。
生まれつきの体型はきっとある。滑るように泳ぐ人は敏感に水を感じ取っていて、水の抵抗の少ない姿勢で、効率よく水を掴んでいるのだろうか。

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今年、3人のクラリネット奏者の演奏を続けて聴く機会があった。音色はかなり違い、暗くこもった音色の人、明るく薄い音の人、その中間の人がいた。

てっきりその違いは楽器や、楽器の調整の問題だろうと思い、その場にいた他の複数のクラリネット奏者に尋ねると(チェロなら多分、楽器の性格や調整、弦の選択などでそうした変化が生まれる)皆、その人の持っている音、と言った。
マウスピースやリードが演奏者に直に接して、顔や頭に響き、「その人の音」がするのだろうか。自分の顔や頭蓋骨の形、大きさは選べないから、もしかして本人が意図しない音が出てしまっている、ということがあるかもしれない。

自分の声を録音して聴き、「こんな声!?」と驚く経験は、多くの人がすると思う。同じように、自分の演奏を録音して、驚く人も多いと思う。
どうしたら自分のことを正確に把握することができるだろうか。

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手で何かを握るとき、親指と、親指の対面にある4本の指のうちどれが中心になりますか?、と二人のチェリストに聞いた。一人は小指、もう一人は中指や薬指だった。僕は人差し指が基準になる。
その人にとって自然な感覚は、特に意識することも、わざわざ表明することもないけれど、握るという感覚一つとってもこれほど違う。
チェロを弾くときの右手と左手の動きは、握るという動作に近いものもある。どのように弓を持つか(持たないか)、どのように指板にアプローチするか、ということを誰かに教えるとき、教える側と教えられる側の感覚が同じなら、おそらくスムースに進む。感覚が異なると、教える側には飲みこみの悪い生徒に見え、教わる側には、この人の言うことはなんだかよくわからない、ということになるかもしれない。
(映像を再確認した訳ではないけれど、ジャン・ギャン・ケラスさんは低いポジションから高いポジションに移動するとき、まず左手の人差し指でシフトし、それから中指や薬指で押さえていた、と記憶する。彼は人差し指が基準になっているのだろうか。)

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自分のことばかり、一方的にしゃべる人がいる。あるいは、周囲に会話に関係ない人がいても、大きな声でしゃべる人がいる。どちらも素敵な話し相手、とは言えないかもしれない。

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何かをするときに、どのようにするか、はよく問題にされる。
日経新聞に時々ゴルフの記事が載り、読むと、その人がどのようにするか、してきたか、彼の観点からの読者へのアドバイスなどが書かれている。
僕は長いこと、どうチェロを弾くか、ということにばかり注力してきた。僕が受けてきた教育もおおむねそうした面から行われていたと思う。オーケストラの同僚とも、どう弾くか、どういう姿勢で、どのように楽器を構え、どのように弓を持ち、どのような指使いで、ということを時々話題にする。

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でもそれと同じくらい、周囲の環境をどのように、どのくらい正確に感じているか、そして自分の起こした行動が周囲にどのような影響を与えているか、どれだけ的確に把握し、いかに次の行動にフィードバックできるか、そうしたことが重要だと思う。

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毎日よちよちピアノを練習している。弾き始める時、楽譜を見、鍵盤を見、指を所定の場所に置く。あるとき盲目のピアニストはどうやって弾いているのだろう、と思い、鍵盤を見ないようにした。見ると、聴くことが留守になりやすい。
チェロを弾いていても、何かの動作に気を取られると、その間演奏の流れが失われたりする。

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(電車に乗ると、多くの人がスマートフォンの小さな画面に釘付けになっているのを見る。今や当たり前になった光景だけれど、それはほんのここ十数年のことだ。五感、あるいはそれ以上の感覚が人間にはあるのに、多くの人が視覚ばかりで生きているように見える。世界はこれからどうなるのだろう、と時々思う。)

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優れた演奏をする人は自分とどう違うのか、そのことに興味を持って過ごしてきた。彼ら彼女たちは、どのような感覚でいるのだろうか。あるとき、そうした人たちにきっと世界は違って見えているのだろう、と思うようになった。

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良い演奏をしたい。
それは単に上手に楽器を操る、ということではなく、どのように音楽全体をとらえ、聞き、認識し、その音楽にフィットするように次の行動をする、ということではないか、と思う。
良い演奏のためには様々な準備や、練習が必要となる。それだけでなく、どのように音楽と向き合っているのか、そして音楽から離れている時でも、どのような心と体の姿勢でいて、どのように周囲の世界を感じ、どのように心と体を使っているか。つまり、普段どのように生きているか、そのことがきっと大切なのだろう、と思う。

2022年12月15日 (木)

11月の日経新聞から

11月21日日経夕刊から、
『世界の新型コロナウィルス対策を一変させたオミクロン型の出現が報告されてから、25日で1年となった。オミクロン型は免疫をすり抜ける性質によって感染力が強く、爆発的に拡大した。・・・600種以上の派生型が確認されているが、共通して免疫をすり抜ける性質が強まる「収れん進化」が進んでいる。』

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11月25日日経夕刊から、
『国際行方不明者機関(ICMP、本部オランダ・ハーグ)の欧州担当の高官は24日、ロシアの軍事侵攻を受けてウクライナで1万5000人超が行方不明になっている、と明らかにした。』

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11月24日日経夕刊から、
『ウクライナの原子力企業エネルゴアトムは23日、ロシアによる電力インフラへの攻撃に伴い、国内にある4原発が外部電源から遮断されたと発表した。放射線量に異常は出ていないという。』

11月17日日経朝刊から、
『北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランド領内に15日にミサイルが着弾し2人が死亡した事件は、ウクライナでの戦闘が偶発的に全面戦争の引き金になるリスクを浮き彫りにした。』

11月1日日経朝刊に掲載された、英フィナンシャル・タイムズの記事から、
『ロシアのウクライナ侵攻によって高騰したガスや電気の料金を払えなくなった何百万人もの東欧の人々にとっては、冬をなんとか乗り切ることが最優先となっている。
 ハンガリーなどでは十分な暖房を維持できない「エネルギー貧困」が大幅に増えると予想される。一方で、環境に悪影響を与える燃料の使用が増えることで、温暖化ガス排出量が大きく増加する懸念も出ている。』

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11月16日日経朝刊から、
『国連総会で14日、ロシアにウクライナ侵攻をめぐる損害の賠償責任を求める決議が94カ国の賛成で採択された。棄権国は73カ国に上り、ロシアによるウクライナ4州の併合を無効とした10月の総会決議から倍増した。』

11月24日日経朝刊に掲載された、イアン・ブレマー氏の記事から、
『ロシアはウクライナで核の使用に踏み切るのか ー 。西側の情報当局が絶えず目を光らせ、西側の首脳が慎重に検討を重ねている問題だ。ロシアのプーチン大統領はその権利を留保していると警告している。威嚇に思えるとしても核戦争の脅威は1962年のキューバ危機以降、最も高い。』

11月17日日経朝刊に掲載された、ロシア国立高等経済学院教授ドミトリー・トレーニン氏の記事から、
『ウクライナ軍事侵攻をめぐるロシア国内の反応は、エリート層と一般市民の間でまったく異なる。
 エリート層は海外に保有していた富や財産を失った。これまで順調だったビジネスや生活スタイルも続けられなくなった。大半が不愉快な思いをしている。一時的にせよ、国外に去った人も多い。
 一般市民は正反対だ。米欧はプーチン大統領や側近に限らず、ほぼ全国民に影響を与える対ロ制裁を発動した。予測をはるかに超える厳しさだ。多くの国民はロシアとウクライナの戦いではなく、ロシアと米欧の衝突だとみなし始めた。その結果、まるで戦時下のように国民が団結し、国家指導部を支える雰囲気が芽生えている。』

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11月15日日経朝刊から、
『世界の人口が15日、80億人の大台に到達する。国連の推計によると70億人に達した2010年から12年間で10億人増えた。出生率の低下などで人口増加率は鈍化が進み、20年に戦後初めて1%を下回った。』

11月16日日経夕刊から、
『痛風やリウマチ、がんや外傷で起きる「持続する強い痛み」の原因となるたんぱく質を特定した、と和歌山県立医大と北海道大、兵庫医大のチームが15日、発表した。』

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11月16日日経夕刊から、
『埼玉大学と基礎生物学研究所のチームは、触れると葉をたたんで「お辞儀」するマメ科の植物オジギソウが、傷を付けられると信号の伝達で葉を動かし、昆虫に食べられることを防いでいるとの研究結果を公表した。』

11月6日日経夕刊から、
『兵庫県立コウノトリの郷公園は15日、福井県越前市から6月に巣立った国の特別天然記念物コウノトリの雌1羽が、中国・浙江省で確認されたと発表した。
 ・・・
 飛行距離は少なくとも1600キロとみられる。』

11月24日日経夕刊から、
『北太平洋のアカウミガメの回遊ルートを解明するため、名古屋港水族館が米国やニュージーランドなどの研究機関と共同で、小型送信機を付けたカメをメキシコ西部バハカリフォルニア沖の海上から放流する調査を来年4月に始める。約5年間の予定。
 日本沿岸でふ化したカメが米西海岸沖まで回遊することは分かっていた。』

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11月29日日経夕刊から、
『「家族の一員」として定着してきたペットの犬。何を思っているの、どうすれば病気になりにくいの。飼い主の疑問はつきない。・・・
 心を開いた人にはしっぽを右方向に片寄らせて振る ー 。そんな研究結果を、中国科学院の研究チームが今夏発表した。』

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11月21日日経朝刊から、
『企業がポストコロナ時代の働き方を探るなか、オフィス街に戻りつつあるのはどんな人か。日本経済新聞が携帯電話の位置情報と趣味や職業などの属性を分析したところ、「お酒好き」な人は朝から出社する傾向が強いことが分かった。』

11月21日日経朝刊から、
『子どもがマンションの高層階から転落して死亡する事故が後を絶たない。・・・
 高層集合住宅に住む子どもの健康に詳しい帝京大学の三木祐子准教授は、子どもの転落事故が起こる背景に高層マンションに住む子育て世帯の増加も関係しているとの見方を示す。幼い頃からタワーマンションなどの高いところで生活していると、高所への怖さを感じにくい「高所平気症」と呼ばれる心理状態になるとして注意を促している。』

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11月1日日経朝刊に掲載された、プロゴルファー宮里優作さんの記事から、
『・・・プロになると経験値が増え、いろんな攻め方も頭に入ってくる一方、成功体験は薄れ悪いイメージが重なってくる。「行け行け」のアマにはいいイメージしかない。蟬川君もゲームプラン通り4日間、得意のドライバーで攻め続けた。』

11月24日日経朝刊に掲載された、亀山郁夫さんの記事から、
『そのゲルギエフが、今回の侵攻ではプーチンとの「癒着」を問題視され、欧米の楽団から完全な締め出しにあった。・・・シーズン開始前の8月には、ウラジオストクの音楽祭に登場し、記者団の質問にも明るく答えている。
「世界の政治はどうあれ、国の偉大さを決定するのは常に文化的な過去、現在、未来だ。ロシアにはすでにその文化的未来がある。早晩、文化が政治に影響し、前面に出てくる」。曖昧ながらも、メッセージが隠しもつ微妙な「距離感」に意を強くした。最後は文化が政治に勝つ、と宣言しているからだ。』

11月16日日経夕刊に掲載された、藤原辰史さんの記事から、
『讃えるべきことが無数に転がっているのに見て見ぬふりをし、憎悪を量産する国家や政党や会社や人間を見て疲弊する日々、本をめぐって連なっていく人たちの知性と誇りに触れ、心を立て直すことができた。』

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2022年12月 1日 (木)

10月の日経新聞から

10月1日日経夕刊から、
『世界の10人に7人が強権国家に住み、民主主義は今や3人未満 ー 。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」の調査でこんな傾向がわかった。
 強権主義の台頭で、民主主義国家に住む人口はこの10年間で2割以上も減った。』

10月4日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの大流行は人類に感染症の恐ろしさを改めてつきつけた。だが裏で静かに進むもう一つの感染症問題がある。抗菌薬が効かない耐性菌の広がりだ。30年後には耐性菌による死者数ががんによる死亡数を上回る可能性があるという。・・・
 「2020年に米国内で7種類の耐性菌による院内感染例が少なく見積もっても前年比で15%増え、耐性菌が原因で2万400人以上が死亡した」 ー 。世界が新型コロナとの共存にようやく活路を見いだし始めた7月、米疾病対策センター(CDC)はこんな報告書を発表した。当時の米国のコロナ死者数の10%弱にあたる人が耐性菌の前に倒れたことになる。未知のウィルスだった新型コロナの流行初期、患者を助けようと過剰に抗菌剤を投与。耐性菌が急激に広まり脅威が増したという。』

10月5日日経朝刊から、
『子どもがインターネットに費やす時間が増えている。内閣府の2021年度の調査では、10~17歳の1日当たりの平均利用時間は約4時間24分だった。』

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日経新聞の連載「私の履歴書」、10月は西川きよしさん。10月2日の記事から、
『大家族でもあり、特に口うるさく行儀作法をしつけられたような記憶はない。ただ母は「他人の悪口はいってはならない」「人様をうらやましがるな」「良いときも悪いときも、幸せには平均点がある」という常識をよく口にしていた。貧しい暮らしゆえに陥りがちな好ましくない習癖が身に付かぬようにということだろう。』

10月2日日経朝刊に掲載された、作家東山彰良さんの記事から、
『夢はいつだって叶えた方がいいに決まっている。でも、そうそううまくいくとは限らない。その夢が大きければ、なおさらだ。叶えられた夢は自信となり、叶えられなかった夢は後悔になる。私に言えるのは、長い人生においては、どちらも同じくらい大切なものだということ。』

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