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2023年4月

2023年4月22日 (土)

1月の日経新聞から

1月をふり返ってみる。

1月13日日経朝刊から、
『2022年までの8年間が記録上最も暖かかったことが複数の研究機関の調査でわかった。大気中の温暖化ガス濃度が記録的な水準に達しているためだ。』

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1月11日日経朝刊から、
『今シーズンの高病原性鳥インフルエンザによる鶏などの殺処分対象数が10日、全国で計約1091万羽となり、1シーズンとして初めて1千万羽を突破した。』

1月8日日経朝刊から、
『北海道大学などの研究チームは、2022年4月に見つかった北海道内のキタキツネとタヌキから高病原性鳥インフルエンザウィルス「H5N1」を検出した。哺乳動物から見つかったのは国内では初めてという。』

1月7日日経朝刊から、
『国内で6日、新たに20万人超の新型コロナウィルス感染者が報告され、累計で3千万人を超えた。2020年1月に国内で感染者が初めて確認され、約3年で人口の4分の1近くが感染した計算になる。』

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1月4日日経朝刊から、
『米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2023年の世界の「10大リスク」を発表した。1位に「Rogue Russia」(ならず者国家ロシア)を挙げた。』(2位「最大化する習権力」、3位「テクノロジーによる社会混乱」)

1月18日日経朝刊から、
『2020年に世界の貧困層の比率が25年ぶりに上昇したことが国際非政府組織オックスファムの経済格差に関する報告書で明らかになった。21年末までの2年間で上位1%の富裕層が得た資産が、残る99%の獲得資産の約2倍にのぼるとも指摘した。』

1月8日日経朝刊に掲載された、「分断の先に」という特集記事から、
『なぜ人々は刹那的な主張と政策になびくのか。世界価値観調査で「他者(周囲)を信頼できるか」の問いに北欧諸国は6~7割がイエスと答えた。北欧より富が偏る米国や日本でイエスは4割を切り、ポピュリズムに流れたチリは12%だ。』
『代償は大きい。独キール世界経済研究所のマニュエル・ファンケ氏が20世紀以降のポピュリスト政権を調べると、政権誕生から15年後の1人当たり国内総生産(GDP)は各国平均で、従来の成長トレンドが続いたと仮定した場合に比べて10%も下回っていた。』

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1月10日日経夕刊から、
『災害や北朝鮮のミサイル発射といった緊急時にSNSに虚偽の情報が投稿される例が後を絶たない。人々の混乱に拍車をかける悪質な行為で、消防や救急など防災関係機関の業務を妨げれば罪に問われる可能性がある。』

1月30日日経夕刊から、
『第2次大戦中のナチス・ドイツによるホロコーストについて、オランダの若者世代の約4人に1人が「作り話」だと認識していることが、米NPOの調査で明らかになった。』

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1月1日日経朝刊から、
『総務省は31日、2023年1月1日時点の人口推計を発表した。・・・このうち18歳の新成人は112万人(総人口に占める割合0.89%)と、少子化を反映して過去最少だった。』
『「おひとり様」が増えている。国勢調査(2020年)によると単身世帯は38%を占め、ひとり暮らしは現代日本で最も多い世帯の形となった。』

1月31日日経朝刊から、
『人口の東京への集中が再加速している。総務省が30日発表した2022年の住民基本台帳人口移動報告では、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3万8023人となり、超過幅は3年ぶりに拡大した。』

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1月11日日経朝刊から、
『東北大と東京大、京都大の研究チームは10日、南海トラフ沿いで巨大地震の発生後、1週間以内に同規模の後発地震が起きる確率は2.1~77%と、平時の99~3600倍に高まると英科学誌に発表した。』

1月15日日経朝刊から、
『かずさDNA研究所などのチームは、不老不死で知られるベニクラゲのゲノム(全遺伝情報)を解読した。通常のクラゲは老いると溶けて死んでしまうが、ベニクラゲは大人になっても若返る。若返るときに働く遺伝子を解析して、老化の解明に役立てる。』

1月11日日経夕刊から、
『アトピー性皮膚炎のかゆみは、皮膚組織で作られるタンパク質が知覚神経を刺激して引き起こされると、佐賀大学や富山大学などの研究チームが10日、発表した。このタンパク質の作用を抑制すれば、かゆみを抑える効果も判明。』

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1月18日日経夕刊に掲載された、「無意識が見つけ出す物語り」という記事から、
『「わたしはプランするのではなく、潜在意識をさぐって物語を見つけ出す」(「夜の言葉」、1979年)とル=グウィンは言う。真の物語は頭で作り出すものではなく、人類の古い集合意識から出てくるものだ。彼女は老荘思想にひかれていたし、両親が文化人類学者であったこともあり、「無意識」の根源的な力こそ、現代のファンタジーが、テーマとして見直すべきものとした。』

1月11日日経夕刊に掲載された、クライミング、森秋彩(もりあい)さんの記事から、
『「クライミングは正解がなく、自分らしさを登りで表現できる。指先や足先までしっかり理解していないといけないから自分と向き合えた」。』

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1月20日日経夕刊に掲載された、ジャパンディスプレイ会長CEO、スコット・キャロンさんの記事から、
『日本のバスや鉄道といった公共交通機関をとても気に入っている。車内で感じるのは日本社会のコミュニティだ。乗るとたちまち人々の小さな絆のようなものを感じる。
 手ごろな値段で、誰もが格差なく良い移動サービスを受けられる。その平等さが日本らしい。駅や車内は世界一清潔で、何より治安が良い。子どもを一人でバスや電車に乗せられる安心感も日本ならではだ。』

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1月28日日経朝刊に掲載された画家、野見山暁治さんの記事から、
『「絵描きを職業とは考えていないんです。自分が世の中に貢献して、それによって報酬をもらうのが仕事だとすれば、僕は人を喜ばすために絵を描いていないし、自分の絵に反響があろうとなかろうとかまわない。人や世の中を対象に仕事をしていないのに、それを職業といえるのだろうか」。そう考える野見山さんは、「絵は生涯の道楽」と語る。』

2023年4月14日 (金)

5月6日の演奏会

今年も洗足にあるプリモ芸術工房で、ピアノの長尾洋史さんとの演奏会をさせて頂くことになりました。5月6日15時開演、プログラムは

L.フォス:カプリッチョ
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第2番
メシアン:イエスの永遠性への賛歌
ブラームス:チェロ・ソナタ第2番

です。


フォスのカプリッチョは30年以上前、今はパリに住んでいる酒井淳君が弾くのを聴き、魅せられた曲です。
名前の通り、気まぐれに走り回る一方、教科書通りの和声進行があったり、ミニマルミュージックのようだったり、と予想を裏切る仕掛けがそこここにあります。
この作品の持つジャズやポップスに通じるグルーヴを出せたら、と思っています。

 

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今年の初め、若い二組のチェリスト、ピアニストが弾くベートーヴェンのソナタを聴く機会がありました。
恥ずかしながら最近ようやく、ピアノという楽器の素晴らしさに気付きつつある僕は、彼ら彼女たちの優れた演奏を聴きながら、ピアノと一緒にソナタを弾くとき、チェロはどのように音を出したら良いのだろう、どう発音するのがピアノにフィットするのだろう、と思いました。
アンナー・ビルスマは、ベートーヴェンの当時、ピアノよりチェロの音が大きいことが問題だった、と言っていました。今は力関係が逆転していますが、現在のピアノとチェロでいったいどのような響きをつくり出すことができるのか、様々なことを試みたいと思っています。

 

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メシアンは第2次大戦中、ドイツ軍に捉えられます。その収容所内で作曲され、初演されたのが「世の終わりのための四重奏曲」、「イエスの永遠性の賛歌」はその中の第5曲です。
極端に遅いテンポの指定があり(16分音符=44)、独特な緊張感があります。高音域のチェロで始まり、その旋律がピアノのホ長調の響きに包まれる瞬間が美しい。

 

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ブラームスの2番のソナタは学生時代、よく弾きました。当時二重奏を組んでいた健太郎と、さぁ今日は3回通してみよう、そんな練習をして、くったり疲れていたことを懐かしく思い出します。熱意だけで生きていた、そんな時代でした。
習っていた倉田澄子先生のところで、先生の師であるポール・トルトゥリエの弓使い、指使いを写した当時の楽譜は今もそのままあります。

 

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オーケストラの仕事をするようになり、ブラームスの4曲の交響曲、2曲のピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、二重協奏曲、ハイドンヴァリエーション、悲劇的序曲、大学祝典序曲、など様々な曲を弾いた後、久しぶりにチェロソナタの楽譜に戻ると、以前弾いた時とはかなり違う曲のように見えました。トルトゥリエの弓・指使いはそのままとっておいて、新しい楽譜で始めることにしました。
つい先日、ブラームスのドイツレクイエムを弾いたのは、素晴らしい経験でした。器楽曲や交響曲には見られないブラームスの素晴らしい世界がある。今年は7月にブラームス後期の名曲、クラリネット三重奏も弾きます。
知っていたはずの作品が、まるで別の曲のように、はるかに大きく素晴らしい姿で現れ、驚くことがあります。この後期のソナタをまるで初めて弾くように、その素晴らしさを少しでも実現できるように演奏したい、と思っています。

 

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連休の後半、お忙しいと思いますが、プリモ芸術工房までお越し頂けたらとても嬉しく思います。
詳細はこちらをご覧下さい。https://primoart.jp/event/event-124572/

 

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2023年4月11日 (火)

マーラーの7番

バーンスタインが指揮したウィーンフィルのマーラー5番をあまりによく聴いて、僕は曲とこの演奏が不可分になってしまった。音色、リズム、そして何より、腐る寸前まで熟した果物や肉のような濃厚な何かがあり、本当に素晴らしいと思う。

でも実際に演奏をする時には、たとえどれほど素晴らしくても、一つの演奏に縛られない方がいい、と思うようになった。今は大きなレパートリーに取り組む時は、できるだけ複数の演奏に接するようにしている。

マーラーの交響曲第7番は、もともとバーンスタインの全集で持っているのだけれど、見通しが良いとは言い難く、図書館やストリーミングサービスで様々な演奏を聴いた。

クリーブランド管弦楽団、と言えばジョージ・セルの指揮を連想する。ブーレーズの指揮で最近のこのオーケストラの音(1994年録音)を聴き、力で押し切るのではなく、品があって、改めて素晴らしい団体と感じた。バーンスタインの演奏からすると、客観的過ぎると感じるかもしれない。
(ジョージ・セルが指揮した録音は、どれも磨き抜かれた演奏だけれど、ある録音は、ある楽器の奏者の演奏が明らかに不調のまま入っていて、オーケストラ弾きとして聴いていて辛くなる。指揮者はとても厳しい人だったのだろうか・・・。)

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学生時代、前述のように5番の交響曲は聴いていて、では7番でも聴いてみよう、と求めたのがクルト・マズア指揮ゲヴァントハウスのCD。聴いてはみたものの、5番とはまるで別の曲で、ぼんやりした僕にはとらえどころがなく、30年くらい棚で眠っていた。
つい先日聴き、驚いた。1982、83年、ドイツが東西に分かれていた時代の録音。見事に引き締まったオーケストラの音で、それぞれの楽器のソロも素晴らしい。ホルンはヴィブラートがかかり、旧ソビエト連邦のオーケストラを彷彿とさせる。バーンスタイン&ウィーンのマーラーが官能的なのに対して、こちらはショスタコーヴィチのような厳しさがある。
僕は83年と85年の2回、当時の東ドイツに行った。壁の向こうの国は、日本にいては想像もできない世界だった。(「37年前の演奏旅行」をご覧下さい。)
また、オイストラフについてのドキュメンタリーの中で、ロストロポーヴィチが、当時の体制の中で、音楽だけが太陽に向かって開かれた窓だった、その気持ちは西側の人にはわからないだろう、と語ったことを思い出す。
壁があった時代、ライプチヒの音楽家たちが、このように素晴らしいマーラーを演奏していたことに、心動かされる。

現代のオーケストラの素晴らしさを堪能できるのは、マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の2016年の録音。
高級スポーツカーに乗っているよう(乗ったことはないけれど)。高性能で、奥行きがあり、官能的で豪華、どこにも不快なところがない。聞こうとしたらできたのに、マリス・ヤンソンスの演奏を実際に聞かなかったことをとても残念に思う。

 

5番はよく聴いたけれど、7番は馴染めない、とこぼす親に書いたのが下記の私流聴き方ガイドのようなものです。読み飛ばして頂けたら、と思います。言及しているCDや分数はヤンソンス&コンセルトヘボウの演奏です。
終楽章の説明の中で、空耳できらきら星変奏曲が聞こえる、と書いていますが、今日のリハーサルで大野さんは、その部分はオッフェンバックの引用、と仰っていました。


・・・・・・


マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
5つの楽章から構成され、第1楽章の規模が最も大きく、真ん中に速い3拍子の第3楽章、その第3楽章を挟むように「夜の歌」と名付けられた第2、4楽章が置かれています。終楽章はロンド形式、主題が形を変えて幾度も現れます。


第1楽章
付点音符のリズムに乗って現れるのが、「テナーホルン」によって奏されるゆっくりとした旋律、すぐ木管楽器、チェロ、トランペットと次々に受け継がれます。この流れを追いましょう。
だんだんテンポが速くなり、お送りしたCDで3分45秒頃に主部に入ります。チェロが弾くモチーフが重要です。このモチーフをよく覚えておいて、様々な楽器、拍子に変化して現れるのを追っていくことが鍵になると思います。


第2楽章「夜の歌」
4拍子、2つのホルンが1つの旋律をかけ合います。この旋律が他の楽器、木管、弦楽器、金管楽器に受け継がれます。この流れを追いましょう。時々ヴィオラのソロがあります。
途中、鈴(カウベル)が鳴ります。これは家畜の群れを模しています。弦楽器のコル・レーニョ奏法(弓の、木の部分で弾く)の叩くような音が聞こえます。
中間部は暗い響きになり(7分40秒頃)、まずオーボエが旋律をとり、その後2本のチェロが加わります。物憂げで、美しい。


第3楽章スケルツォ
速いテンポで目まぐるしく動きます。一つながりの旋律線に聞こえますが、細かく様々な楽器が受け継いで行きます。実際の演奏を目にすると、きっとそのことがよくわかると思います。オーケストラの能力が問われる部分です。
2回、コントラバスとチューバが絡むソロがあります。低音楽器のソロは、とても個性的です。


第4楽章「夜の歌」
ゆったりとした2拍子、独奏ヴァイオリンのオクターヴの跳躍で始まり、ギターとマンドリンが加わる大変珍しい編成です。それまでの大規模なオーケストラが急にこぢんまりとして、親密な感じになります。こうしたコントラストのつけ方がマーラーの巧みなところと思います。
ヴァイオリンソロの旋律はチェロソロやヴァイオリンtuttiの形でも現れます。

第4、5楽章の特徴として、同じ音程で構成されるモチーフがよく現れます。このモチーフを追うことも、作品後半の鍵になると思います。


第5楽章ロンド
ティンパニで勇ましく始まり、華やかな旋律がトランペットに、さらに弦楽器に受け継がれ、オーケストラ全体の強い音楽になります。この時ヴァイオリンの旋律の裏で、木管楽器が演奏する名人芸的な16分音符の細かい動きも、重要なモチーフです。
ハ長調の響きに、遠い変イ長調の和音がかぶせられ(1分38秒)、曲は次の部分へ進みます。
ロンド、同じ旋律が幾度も回るように現れる形式です。最初の旋律が様々に形を変えて(楽器を変え、拍子を変え)現れるのを追いましょう。
弦楽器の力技が求められるのが、7分35秒頃と11分7秒頃から始まるフレーズです。特にそれぞれ7分52秒頃と11分30秒頃からの八分音符の連続はとても技巧的です。弦楽器セクションの力量が問われます。

本筋ではありませんが、12分53秒頃からの、同じ音のモチーフが続くフレーズは、きらきら星変奏曲の主題のようにも聞こえます。

曲の最後はハ長調(ド・ミ・ソ)の輝かしい響きに包まれます。ただ、最後から2小節目だけ、ソが半音上がり、配置も変えられて(ソ#・ド・ミ)、一瞬不思議な響きがします。見事なひねりの加えられた着地と思います。

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