2月の日経新聞から
2月をふり返ってみる。
2月6日日経朝刊から、
『東南アジアの最貧国、ラオスで不発弾による事故が後を絶たない。8000万発が残ると推定されており、政府が統計を取り始めた2008年から22年までに累計1000人以上の死傷者を出した。ベトナム戦争を終結に向かわせたパリ和平協定から50年を迎えた今もなお、ラオスの経済発展を妨げる「負の遺産」となっている。』
2月23日日経朝刊から、
『ロシアはウクライナ侵攻で、2022年3月までに占領した土地のおよそ半分を春以降に失った。欧米の武器供与を受けたウクライナが奪還した。ロシア軍と民間軍事会社の死傷者は20万人規模との推計があり・・・。
侵攻は24日に1年を迎える。ロシア軍による支配・侵攻地域は現在、ウクライナの東部・南部を中心に全土の18%を占める。』
2月8日日経朝刊から、
『国内で報告された新型コロナウィルス感染症の死者が7日、累計で7万人を超えた。1月上旬に6万人を超えたばかりで、1カ月で1万人増えた。』
2月12日日経朝刊から、
『人間活動の影響によって、生物多様性が損なわれ、感染症の脅威が増すとの報告が相次ぐ。ウィルスなどの病原体を持つコウモリの生息域が変化したり、病原体を媒介するネズミやダニが増えたりするからだ。』
2月1日日経夕刊から、
『福島大などの研究チームは紀伊半島に住む野生のニホンジカの遺伝子を調べた結果、このうち奈良公園のシカが独自の遺伝子型を保っていることが分かったとする論文を米哺乳類学会の学会誌で発表した。
園内にある世界遺産・春日大社の神の使い「神鹿(じんろく)」として千年以上前から人間の保護を受け、集団を維持してきたことを示している。』
2月27日日経朝刊から、
『東日本大震災で津波が襲った仙台湾沿岸の干潟の生態系が、ほぼ震災前の姿に戻ったという。東北大学などの研究者の調査に延べ約500人のボランティアが協力。約10年間、生き物の採取を続け「巨大津波の自然界での意味」の一端を明らかにした。』
2月19日日経朝刊から、
『80億人に達した人類の影響はあまりに大きかった。その活動で世界はプラスチックやコンクリート、温暖化ガスであふれかえり、地球の環境は激変した。人類の行き過ぎた振る舞いを地球史に記す必要があるとして、新たな時代「人新生(じんしんせい)」を定めるべきだとの声が強まっている。
人類が残した爪痕は深い。イスラエルのワイツマン科学研究所は人類が生産した人工物の総量が生物の量を上回ったようだと2020年の英科学誌ネイチャーに発表した。』
2月1日日経夕刊から、
『米航空機ボーイングは31日、ジャンボ機「747」を米貨物航空アトラスエアに引き渡し、同機種の生産を終了した。ライバルの欧州エアバスも「A380」の生産を終えており、超大型機の時代が名実ともに幕を閉じる。』
2月9日日経朝刊から、
『1964年の東京五輪・パラリンピックの開催に合わせて整備した道路や施設などのレガシー(遺産)に老朽化の波が押し寄せている。急ピッチで整備された数々の施設は今なお現役で、改修を重ねながら当時の姿を保っている。・・・
「崩壊するシナリオに乗っており、科学的にはいつ崩壊してもおかしくない」。コンクリート工学に詳しい横浜国立大学大学院の前川宏一教授は羽田トンネルの現状について、こう指摘する。』
2月8日日経朝刊に掲載された関東学院大学教授、島澤諭さんの記事から、
『2023年度予算案は一般会計総額が114.4兆円と、当初予算としては初めて110兆円を超えた。税収は過去最高の69.4兆円を見込みながら、国債発行額は35.6兆円と依然高水準を維持する。政府は税収が増えても巨額の債務残高を減らさず、その分歳出を増やすだけで財政健全化は進んでいない。
日銀が実質的な金融引き締めに転じるなか、毎年30兆円超もの新規国債発行を伴う赤字財政運営をいつまで続けられるのだろうか。』
2月7日日経朝刊から、
『先進国で最も短い日本人の睡眠時間。・・・総務省の社会生活基本調査によると、新型コロナウィルス下の2021年に平日の睡眠時間が1976年の調査開始以来初めて増えた。・・・
2021年の平日の睡眠時間は10歳以上男女の全国平均で1日462分(7時間42分)と前回の16年調査より13分増えた。』
2月14日日経朝刊から、
『総務省の社会生活基本調査によると、平日の1日のうち食事に充てた時間は平均96分だった。1日3食とすると1食あたり30分強。働いている人に限ると89分となり、調査が始まった1976年以降で最も短くなった。』
2月20日日経朝刊に掲載された池上彰さんと、ノーベル賞受賞者スバンテ・ペーボ博士の記事から、
『ペーボ「新型コロナの重症化リスク要因には高齢者、既往症、男性などがわかっていました。でも、それだけでは説明がつきませんでした。ネアンデルタール人に由来する遺伝子があると重症化して亡くなるなどのリスクが2倍になることがわかりました。その遺伝子は欧州の人の約16%、南アジアの特にインドやスリランカでは最大50%の人が持っています。一方、日本や中国の人々にはほとんどないことが興味深いです」』
2月6日日経夕刊に掲載された小説家、高瀬隼子さんの記事から、
『自分で書いた小説を後で読み返してみた時、われながらこのシーンはいいな、このセリフや描写はよく思い付いたな、と感じる部分は、ほとんどが膝を曲げたときに書いた箇所だ。曲げれば曲げるほど、言葉が出てくるような気がする、というのはさすがに思い込みがすぎるかもしれないが、冷えたつま先を両手で包んで温めると、冷え切った一行の代わりに熱のこもった一文が書ける、気がする。脚と手はわたしの体でつながっている。』
2月27日日経夕刊に掲載された東大寺別当、橋村公英さんの記事から、
『種をまき花が咲くまで早くて3年。8年ほどかかることもある。植物を前にすると人は観念的な時間ではなく、生物本来の時間に引き戻される。日常の中で大切にしているひとときだ。』
2月4日日経朝刊に掲載されたレオス・キャピタルワークス会長兼社長、藤野英人さんの記事から、
『カミュの『シューシポスの神話』が示す通り、賽の河原で石を積み上げているのが人生です。目標に達したと思った瞬間、スタートに戻る。無限の罰を生きることこそが無限の命であり、徒労の中に輝きがあるのだと思います。』
2月7日日経夕刊に掲載された翻訳家、斎藤真理子さんの「銀行員の詩集」という記事から、
『読むたびに尽きない発見がある。そして随所に戦争の匂いが漂う。
「これが正しい事だと云つて / 戦争が起こつた / これが正しい事だと云つて / 終戦になつた」(「その眸」)
と振り返るのは住友銀行の深山杏子さん。この詩集には従軍、抑留、戦災、引き上げの記憶と共に、朝鮮戦争の勃発と日本の再軍備という現実が書かれている。』
2月12日日経朝刊に掲載された詩人、和合亮一さんの記事から、
『筆を折って半年ほどが経った。一通の手紙が届く。「あなたの詩に心が動かされました。他にも掲載されているものがあれば、ぜひ」。それを読んでくれたのだ。困った。他に雑誌は無い。言い訳の返信を添えながら、捨てずにしまっていた大量の生原稿を丹念にコピーして送らせていただく。
御礼の手紙が。「私は長距離トラックの運転手をしています。本日も新潟から雪道を戻ってきました。家に帰り、とっぷりとコタツに入り、すっかりと眠たくなるまで、詩をあれこれ読みふけるのが何より好きです」。丁寧な文字だ。「あなたの作品を繰り返し読んでいます。実は内容はあまり理解できてはいないのですが、とても元気が湧いてきます」。見つめる。穴が空くほどに。はらはらと見えない何かがこぼれそうになった。』