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2023年5月

2023年5月20日 (土)

2月の日経新聞から

2月をふり返ってみる。

2月6日日経朝刊から、
『東南アジアの最貧国、ラオスで不発弾による事故が後を絶たない。8000万発が残ると推定されており、政府が統計を取り始めた2008年から22年までに累計1000人以上の死傷者を出した。ベトナム戦争を終結に向かわせたパリ和平協定から50年を迎えた今もなお、ラオスの経済発展を妨げる「負の遺産」となっている。』

2月23日日経朝刊から、
『ロシアはウクライナ侵攻で、2022年3月までに占領した土地のおよそ半分を春以降に失った。欧米の武器供与を受けたウクライナが奪還した。ロシア軍と民間軍事会社の死傷者は20万人規模との推計があり・・・。
 侵攻は24日に1年を迎える。ロシア軍による支配・侵攻地域は現在、ウクライナの東部・南部を中心に全土の18%を占める。』

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2月8日日経朝刊から、
『国内で報告された新型コロナウィルス感染症の死者が7日、累計で7万人を超えた。1月上旬に6万人を超えたばかりで、1カ月で1万人増えた。』

2月12日日経朝刊から、
『人間活動の影響によって、生物多様性が損なわれ、感染症の脅威が増すとの報告が相次ぐ。ウィルスなどの病原体を持つコウモリの生息域が変化したり、病原体を媒介するネズミやダニが増えたりするからだ。』

2月1日日経夕刊から、
『福島大などの研究チームは紀伊半島に住む野生のニホンジカの遺伝子を調べた結果、このうち奈良公園のシカが独自の遺伝子型を保っていることが分かったとする論文を米哺乳類学会の学会誌で発表した。
 園内にある世界遺産・春日大社の神の使い「神鹿(じんろく)」として千年以上前から人間の保護を受け、集団を維持してきたことを示している。』

2月27日日経朝刊から、
『東日本大震災で津波が襲った仙台湾沿岸の干潟の生態系が、ほぼ震災前の姿に戻ったという。東北大学などの研究者の調査に延べ約500人のボランティアが協力。約10年間、生き物の採取を続け「巨大津波の自然界での意味」の一端を明らかにした。』

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2月19日日経朝刊から、
『80億人に達した人類の影響はあまりに大きかった。その活動で世界はプラスチックやコンクリート、温暖化ガスであふれかえり、地球の環境は激変した。人類の行き過ぎた振る舞いを地球史に記す必要があるとして、新たな時代「人新生(じんしんせい)」を定めるべきだとの声が強まっている。
 人類が残した爪痕は深い。イスラエルのワイツマン科学研究所は人類が生産した人工物の総量が生物の量を上回ったようだと2020年の英科学誌ネイチャーに発表した。』

2月1日日経夕刊から、
『米航空機ボーイングは31日、ジャンボ機「747」を米貨物航空アトラスエアに引き渡し、同機種の生産を終了した。ライバルの欧州エアバスも「A380」の生産を終えており、超大型機の時代が名実ともに幕を閉じる。』

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2月9日日経朝刊から、
『1964年の東京五輪・パラリンピックの開催に合わせて整備した道路や施設などのレガシー(遺産)に老朽化の波が押し寄せている。急ピッチで整備された数々の施設は今なお現役で、改修を重ねながら当時の姿を保っている。・・・
 「崩壊するシナリオに乗っており、科学的にはいつ崩壊してもおかしくない」。コンクリート工学に詳しい横浜国立大学大学院の前川宏一教授は羽田トンネルの現状について、こう指摘する。』

2月8日日経朝刊に掲載された関東学院大学教授、島澤諭さんの記事から、
『2023年度予算案は一般会計総額が114.4兆円と、当初予算としては初めて110兆円を超えた。税収は過去最高の69.4兆円を見込みながら、国債発行額は35.6兆円と依然高水準を維持する。政府は税収が増えても巨額の債務残高を減らさず、その分歳出を増やすだけで財政健全化は進んでいない。
 日銀が実質的な金融引き締めに転じるなか、毎年30兆円超もの新規国債発行を伴う赤字財政運営をいつまで続けられるのだろうか。』

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2月7日日経朝刊から、
『先進国で最も短い日本人の睡眠時間。・・・総務省の社会生活基本調査によると、新型コロナウィルス下の2021年に平日の睡眠時間が1976年の調査開始以来初めて増えた。・・・
 2021年の平日の睡眠時間は10歳以上男女の全国平均で1日462分(7時間42分)と前回の16年調査より13分増えた。』

2月14日日経朝刊から、
『総務省の社会生活基本調査によると、平日の1日のうち食事に充てた時間は平均96分だった。1日3食とすると1食あたり30分強。働いている人に限ると89分となり、調査が始まった1976年以降で最も短くなった。』

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2月20日日経朝刊に掲載された池上彰さんと、ノーベル賞受賞者スバンテ・ペーボ博士の記事から、
『ペーボ「新型コロナの重症化リスク要因には高齢者、既往症、男性などがわかっていました。でも、それだけでは説明がつきませんでした。ネアンデルタール人に由来する遺伝子があると重症化して亡くなるなどのリスクが2倍になることがわかりました。その遺伝子は欧州の人の約16%、南アジアの特にインドやスリランカでは最大50%の人が持っています。一方、日本や中国の人々にはほとんどないことが興味深いです」』

2月6日日経夕刊に掲載された小説家、高瀬隼子さんの記事から、
『自分で書いた小説を後で読み返してみた時、われながらこのシーンはいいな、このセリフや描写はよく思い付いたな、と感じる部分は、ほとんどが膝を曲げたときに書いた箇所だ。曲げれば曲げるほど、言葉が出てくるような気がする、というのはさすがに思い込みがすぎるかもしれないが、冷えたつま先を両手で包んで温めると、冷え切った一行の代わりに熱のこもった一文が書ける、気がする。脚と手はわたしの体でつながっている。』

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2月27日日経夕刊に掲載された東大寺別当、橋村公英さんの記事から、
『種をまき花が咲くまで早くて3年。8年ほどかかることもある。植物を前にすると人は観念的な時間ではなく、生物本来の時間に引き戻される。日常の中で大切にしているひとときだ。』

2月4日日経朝刊に掲載されたレオス・キャピタルワークス会長兼社長、藤野英人さんの記事から、
『カミュの『シューシポスの神話』が示す通り、賽の河原で石を積み上げているのが人生です。目標に達したと思った瞬間、スタートに戻る。無限の罰を生きることこそが無限の命であり、徒労の中に輝きがあるのだと思います。』

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2月7日日経夕刊に掲載された翻訳家、斎藤真理子さんの「銀行員の詩集」という記事から、
『読むたびに尽きない発見がある。そして随所に戦争の匂いが漂う。
「これが正しい事だと云つて / 戦争が起こつた / これが正しい事だと云つて / 終戦になつた」(「その眸」)
と振り返るのは住友銀行の深山杏子さん。この詩集には従軍、抑留、戦災、引き上げの記憶と共に、朝鮮戦争の勃発と日本の再軍備という現実が書かれている。』

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2月12日日経朝刊に掲載された詩人、和合亮一さんの記事から、
『筆を折って半年ほどが経った。一通の手紙が届く。「あなたの詩に心が動かされました。他にも掲載されているものがあれば、ぜひ」。それを読んでくれたのだ。困った。他に雑誌は無い。言い訳の返信を添えながら、捨てずにしまっていた大量の生原稿を丹念にコピーして送らせていただく。
 御礼の手紙が。「私は長距離トラックの運転手をしています。本日も新潟から雪道を戻ってきました。家に帰り、とっぷりとコタツに入り、すっかりと眠たくなるまで、詩をあれこれ読みふけるのが何より好きです」。丁寧な文字だ。「あなたの作品を繰り返し読んでいます。実は内容はあまり理解できてはいないのですが、とても元気が湧いてきます」。見つめる。穴が空くほどに。はらはらと見えない何かがこぼれそうになった。』

2023年5月14日 (日)

ありがとうございました

5月6日プリモ芸術工房での演奏会、多くの方々にお越し頂き、また、配信でも多くの方々にお聴き頂き、本当にありがとうございました。

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この1年も本当に多くの、主にオーケストラのレパートリーですが、曲を演奏しました。どの曲も高くそびえる山や、分け入っても分け入ってもまだ入り口でしかない深い森のようで、作曲という仕事のすごさに嘆息するばかりです。
作曲家はいったい何を書こうとしたのか、スコアを開き、足りない頭を使って、読み解こうとしてきました。

マーラー、ブルックナー、シェーンベルク、マデトヤ、シベリウス、シューマン、シュミット、ショーソン、ベルリオーズ、サン・サーンス、リャードフ、ストラヴィンスキー、バルトーク、ラヴェル、ドビュッシー、リゲティ、ブラームス、ルトスワフスキ、エルガー、・・・、様々な作品が自分の体を通り抜けた後、今年の4月久しぶりにメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲や交響曲第3番「スコットランド」を弾いた時、こんなに素晴らしい曲だった、と驚きました。
一つのフレーズを弾く度、一つの音から次の音へ移る度に、動きやその音の持つ強さ、必然性を感じ、メンデルスゾーンさん、まさにこれが音楽ですね、と心動かされました。
知っていたつもりの曲の素晴らしさに改めて気付く、演奏の仕事をしていて、本当に良かったと感じる瞬間です。

5月6日のプログラムも全て、過去に弾いたことがあり、どの作品にもその奥深さを初めて知るような感覚を持ちました。

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どれほど入念にその曲を準備しても、本番で弾いてみないとわからないことがあります。何十年もつきあってきた自分の体と心は、舞台の上でいったいどう振る舞うのか、実際に足を踏み出してみないとわからず、本当に興味深いです。

オーケストラの仕事をしていると、多くの演奏家の音に接します。その人の立ち居振る舞いと同じように、音にもその人そのものが現れます。楽器や体格も左右しますが、その人の体の使い方や使い方の癖(くせ)のようなものが音やフレージングに大きく影響している、と感じるようになりました。自分に対しても同様です。

演奏会の前、久しぶりにまとまった時間、自分が弾くということに真正面から向き合いました。
僕のチェロはストラディヴァリウスやゴフリラのような銘器ではないし、僕自身ももちろん超人的な演奏家ではない。重要なことは自分の中で体と心がどうつながっているのか、自分自身に耳を澄ませ、どう体と心を使えば、その音楽の表現にかなうのか、ということだと思います。

ちょっとした自分の癖があり、それが表現に大きく影響していることがある。癖、というのは無意識にしていることで本人は気付いていない。その気付いていないことが意図していない音を出す、表現をしている。思ったように弾けていない、上手くいっていない、漠然とは感じているのだけれど、原因がわからない。うまくいっていないことが習慣化し、癖が強化されてしまう。
一つの癖が他のことに影響することもあります。自分ではなぜそうなるのかわからず、頑張ってしまうとさらに悪くなる。
癖に気付き、癖だから変えるのは大変なのだけれど、気付くことによって一つ結び目をほどくことができる。すると次の結び目が見えてきて・・・、という時間を過ごしました。長い年月をかけて複雑に絡み合ってしまった糸を、辛抱強く丹念にほどいていくように。

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楽器を弾いてきて良かったことの一つは、自分の体と心が意識の表面で考えるようには動かない、と身にしみて知ることだと思います。(100メートルを10秒で走りたい、とどんなに強く念じても、それはほぼ不可能なことを考えて頂いたらよいでしょうか。)
その思い通りにならない体と心に、いったいどうやったらアクセスできるのか。今、初心者のような心持ちで、チェロを弾くことが楽しいです。

5月6日の公演、お聴き苦しいところがあったと思います。でもあの場を経ることで少し前に進むことができました。本当にありがとうございました。

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