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2024年3月

2024年3月19日 (火)

佐藤良雄チェロ指導曲集

先月末からオペラ、トリスタンとイゾルデが始まり、多くの時間がそのオペラに吸い寄せられて、本も新聞もほとんど読めない毎日が続いている。
日経新聞の夕刊連載「こころの玉手箱」、先週は絵本作家いせひでこさん。ようやく、素敵な文章と写真の記事5日分をまとめて読むことができた。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79164460S4A310C2BE0P00/

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3月12日夕刊に掲載された文章から、

『東京に来て母は教育ママの権化と化した。札幌で習っていたバイオリンの後任の先生探しが始まったが、どこも生徒がいっぱいで、紹介されたのは才能教育(スズキメソード)のチェロ科設立に奔走されていた佐藤良雄先生だった。パブロ・カザルスの元に学ばれ「カザルスとの対話」を翻訳出版されていた。
 バイオリンのお稽古では、間違うと母の竹の物差しが弓を持つ手に飛んできた。「お母さん、弓で弦をこすって音を出すと言うことは大変なことなのですよ」佐藤先生は、まず母に弓を持たせ、音階ができるまで、次は、「きらきら星」が弾けるまで、そしてスズキの1巻最後の『ガボット』が弾けるようになるまで、私のレッスンの前の時間を母のために割いてくださった。
 母は、物差しを持つことはなくなった。
 チェロは、13歳の人生に与えられた福音書だった。』

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僕がチェロを始めた時も佐藤良雄先生の教本だった。驚くほど出来の悪い生徒で、まったく進まず、後から始めた子たちに次々追い抜かれていった。
思い出深いのは第3巻にあるヴィヴァルディのアレグロ。この2ページに半年かかった。習っていた中島顕先生は、当時は厳しく、僕は泣き虫で、毎日の練習ではよくかんしゃくを起こし、母とケンカのようになり・・・。
職業音楽家になるなんて、誰も思わなかった。

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全部で6巻ある「鈴木メソードによる 佐藤チェロ指導曲集」、難しいけれど、魅力的な曲がたくさんあった。ジョスランの子守唄、シューベルト:楽興の時、コレルリ:グラーヴェ、デルブロア:哀歌、サムマルチーニ:ソナタ、ブルッフ:コル・ニドライ、ボッケリーニ:ソナタ、・・・。
巻末に全ての曲名が載っていて、レッスンを待つ間、どんな曲なんだろう、と思ったりした。

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当時憧れだったのは5巻にあったポッパーのガボット(曲集にはポッペル、と記載されている)。有名なポッパーの40のエチュードは今も練習するけれど(今日は第5番)、あの生き生きとしたガボットを、いつか演奏会のアンコールで弾いたら、と思う。

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