東北旅行
リハーサルの後、東北新幹線に乗り八戸へ。3月下旬、久しぶりに都響の東北公演があった。
翌朝、八戸駅で早い時間の八戸線に乗るとYさんの姿があり、僕もご一緒させてもらう。列車の最前部、運転席の後ろに立ち、線路の先を見る。
八戸から種差海岸までの海は美しく、以前にも訪れたことがある。(2018年8月の日記「北へ」をご覧下さいhttp://ichirocello.cocolog-
今回も海沿いを歩こうと思った。種差海岸駅で降り、2駅先の金浜まで海を見ながら歩くとちょうど次の列車に間に合う、という計算だ。
季節外れのあたたかさが嬉しい。
再び八戸線に乗り、久慈へ。
空腹を抱えとんかつ屋に入ると、A君と一緒になった。公演は夜、ゲネプロまでまだ少し時間があるので初めての町を歩く。どの通りを歩いても、どの角を曲がっても、初めての光景が眼に入る。カメラを持って歩くのが楽しい。
この日の公演は久慈市文化会館アンバーホール、立派な会場だった。
翌朝再び八戸線に乗り、北に向かう。前日と同じように一本早い列車に乗り、2駅分海を見ながら歩く。この日は平内から階上(はしかみ)まで。
階上で八戸線に乗り、前方に伸びていく線路の先を見る。車窓からの景色は様々に変化していくけれど、線路はいつも先に伸びていて、無心に見ている時間は心地良かった。
八戸で東北新幹線に乗り換え、郡山へ。黄砂の影響か、遠景が霞んで見える。
今回は、いつもと違うチェロを使った。演目は下野竜也さんの指揮でドラゴンクエストⅤ。すぎやまこういちさんのドラゴンクエスト、西洋音楽の手法で書いてあるのだけれど、いつもの曲とは少し違う。いつもと違う楽器で、どう弾くとこの音楽にフィットした音やフレーズを生み出せるのか、工夫する時間だった。
郡山の公演日は朝から強風が吹いた。昼、地図で見つけたヴェトナム料理店に向かう。はて、店はこのあたりのはずなのに、と通り過ぎると、建物の扉が開き、店主が出てきて、今日は風が強くて看板を出していません、とのことだった。店内に入れてもらい、ほっとする。吹き飛ばされそうな凄まじい風だった。
夜の公演を終え、新幹線で帰京するはずが、遅い時間になっても、風の影響で列車の運行は大幅に乱れている、とのことだった。人であふれるホームや、朝になれば何事もなかったように回復するだろうことを想像し、郡山にもう1泊することにした。
果たして、翌朝は穏やかだった。昼前に東京に着くと桜が咲いていた。
午後、旅の間弾けなかったピアノをさらう。いつものようによちよちと、でも旅の前にうまくいかなかったことがスムースに進む。
それから、チェロのゆるめておいた弦を調弦し、さらう。予定より少し伸びた旅の後、いつものチェロに触れるのは新鮮だった。同時に、あれ?という感覚もあり、セッティングを少し変えた。旅に行かなければ気付かなかったことと思う。
今回の旅は海沿いをずいぶん歩いた。前回の旅で歩いた海岸を八戸線の車窓から見たとき、思いがけず感情が動いた。すっかり忘れていた7年前の心をありありと思い出した。
東北新幹線の速さは驚くほどで、徒歩の旅とは鮮やかな対照をなす。でも、その一歩一歩は体に深く刻まれる。
旅に出、普段の生活を離れる。旅先では思いもよらないことが起こり、普段頭を占めていた様々な物事はどこかに行ってしまう。再び日常に戻ってきた時、出掛ける前とは少し違う自分になっていて、音楽は違う姿を見せ、楽器も違う感覚で弾ける。
体と頭は同じ向きに使い続けない方が良いのかもしれない。
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