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2025年6月21日 (土)

レパートリー

少し前、若いチェリストに向けて書いた文章を下記に。部分的に手を加えてあります。

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先日のレパートリーの話の続きです。
もし時間があれば、そして興味があれば、お読み下さい。つまらなくて途中で止めたり、読んで下さらなくても、まったく問題ありません。

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僕は目の前の、弾かなくてはならない曲や弾きたい曲を、何十年も弾き続けてきました。ある時、クラシック音楽の世界にはいったいどんな曲があるのか、何となくでもその全体を感じておくことは大切かもしれない、と思うようになりました。

チェロのレパートリーに詳しい訳ではないのですが、主なものを挙げると、バッハの組曲、ベートーヴェンのソナタ、シューマンの小品、ブラームスのソナタ、シューベルトのアルペジョーネソナタ、もちろんボッケリーニの作品も大切ですし、デュポールやポッパーも楽器を知る上で欠かせない。コダーイの無伴奏や、ショスタコーヴィチ、ラフマニノフのソナタなど。
協奏曲ではハイドンの2曲、シューマン、ブラームス(二重協奏曲)、ドヴォルザーク、エルガー、ロココ、ドン・キホーテ、ショスタコーヴィチの2曲、・・・。チェロを弾く者にとって宝物のような名曲の数々です。

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ただ、西洋音楽のレパートリー全体を一本の大きな木に見立てた時、残念ながら、その太い幹を構成する作品の中に、チェロのレパートリーはあまり入らないのではないか、と思います。
先日ショスタコーヴィチの5番の交響曲を弾きました。チェロソナタと作曲年代も近く、様々な関連を見出すことができます。ただ、5番の交響曲が持つ音楽の深さや大きさは圧倒的なものです。
どのような曲がレパートリーの太い幹になるのでしょうか。様々な見方や考え方があり、それぞれの人がそれぞれの木を思い描けばよいと思います。

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多くの作曲家は同時に優れた鍵盤楽器奏者でもあり、おそらく作曲にも鍵盤を用いたはずです。そして大編成の管弦楽やオペラにも大きなエネルギーを注いだだろう、と想像します。
平均律を始めとするバッハの様々な鍵盤楽器作品、ロ短調ミサ、受難曲、ハイドンの様々な作品、モーツァルト、ベートーヴェンのピアノソナタ、交響曲、弦楽四重奏、シューマン、ブラームス、チャイコフスキー、ワーグナーのオペラ、それまでにない世界を表現したドビュッシーやラヴェルの作品、R,シュトラウスの管弦楽作品、マーラー、ショスタコーヴィチ、バルトーク、・・・。
オーケストラの仕事をしていると、本当に多くの曲を演奏します。そして、作曲家の仕事というものがどれほど常人ばなれしたものか、身をもって知ることになります。信じられないような能力を持つ人たちが、彼らの先人たちの仕事を受け継ぎ、さらに発展させていく。

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新しい曲に取り組む時、これまで弾いてきた曲をとらえ直す時、とても大きなエネルギーが必要ですね。レパートリーの太い幹を形作る作品はどれも、信じられないほどの何かを持っていて、その強さに普段に触れ、心動かされることが、自分の音楽を深めていく時の大きな原動力になるような気がします。

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20世紀のチェロのレパートリーを見渡す時、ロストロポーヴィチの影響を考えずにはいられません。
ロストロポーヴィチがショスタコーヴィチと録音したショスタコーヴィチのソナタ、やはり彼がベンジャミン・ブリテンと録音したアルペジョーネ・ソナタの録音は是非聴いてみて下さい。傑出した作曲家たちが、演奏家としてもどれほど優れていたのか。作曲家がこれほど生き生きとした、見事な音楽を抱いていたことに、畏怖の念を抱くほどです。

ショスタコーヴィチの演奏には見事なヴィルトゥオージティがあり、同時にアンサンブル奏者としても、優れたセンスに驚きます。
ブリテンが弾いたアルペジョーネの冒頭があまりに素晴らしく、聞き惚れたロストロポーヴィチが弾き始めるのを忘れた、というエピソードが伝記にありました。広いテンポで悠然と始まるピアノのほの暗い音色はとても魅力的です。

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ご存じのように、世界には他にも様々な素晴らしい音楽がありますね。何十年も前、ビートルズというロックバンドがあり、その若者たちが作った多くの歌が世界中の人々の心をとらえました。また、ジャズの世界には巨人と呼ばれた人たちがいて、まったく異なる感覚で、素晴らしい音楽を次々と生み出しました。

機会があったら是非触れてみて下さい。外の世界を知ると、西洋のクラシック音楽がどういう音楽なのか、よりいっそう感じられるかもしれません。

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