楽器のこと

2017年4月20日 (木)

昨日は楽しみにしていた原美樹子写真展「Change」へ。http://www.nikon-image.com/activity/salon/exhibition/2017/04_shinjyuku.html#02
素晴らしかった。ただ、それを言葉にすることはとても難しい。特別なことが写っている訳でも決定的瞬間が写っている訳でもない気がするし、もしかして直接写っているものはさほど重要でないような気さえする。でも写真なのだから写っているものが・・・。
あぁこんな世界がある、と思った。アサヒカメラ誌4月号別冊に掲載された原さんのインタビューから

『ピントは目測なので適当にピントを合わせて、ファインダーも曖昧なのであまりのぞかない。目の前を通り過ぎていく風景であったり人であったりを、なるべく静かにすくい上げたいと思っています。目の前のものに対して感情、言葉が湧き上がってくる一歩手前が気になっているのかな。見てくださったそれぞれの方の記憶の断片に触れるような、そんな写真であればいいなと思います。』

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アルキメデスではないけれど、僕も風呂に入っていて思い付いた。楽器にかかる力を考えたエンドピンのストッパー。東急ハンズで材料を加工してもらい、早速組み立てた。さて。

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2016年11月23日 (水)

自由研究

わかったようなことを書いたのだけれど(8月11日の日記をご覧ください http://ichirocello.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-7515.html )、その後、名古屋の古い友人と楽器のことでメールのやりとりをしていて見附さんの新しいエンドピンを教えてもらい、もうエンドピン探しは止めたつもりだったのに、問い合わせてサンプルを送って頂いた。

結局その新製品ではなく、同時に試した芯にカーボンの入った真鍮のエンドピンを注文した。不思議なのは長さの問題。試したエンドピンは50センチ、実際に僕が頼んだのは45センチ、この5センチが意外と音に関係している気がする。持ち運びもあるから少しでも軽く、と僕にしては必要十分な長さなのだけれど、そう単純ではないらしい。これまでの鉄製のエンドピンに戻したり、新しいものにしてみたり。

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弦はドルチェのスペシャルを気に入って使っていたのが、ある日楽器が閉じていることに気付き、昔ながらのミディアムに戻した。明るくてよく鳴るけど、芯が無い感じで心もとない。思い付いてエンドピンをカーボンの入った真鍮にしたら落ち着いた。軽い弦に重いエンドピンという組み合わせは良いのかもしれない。

最近はエンドピンのストッパーに様々な構造のものがあることを教えてもらった。長いこと固い木のストッパーが良いと思っていたのだけれど、ストッパー内を中空にして楽器の振動を地面から自由にする、あるいはストッパー自体を響くようにする、こんなアイデアに基づいているらしい。学生時代、調律師のKさんが固い桜の木を削り出して、アーチ状のストッパーを作ってくださったことを思い出した。
自分で作っても、と思い、東急ハンズの素材売り場をうろうろもしたのだけれど、たまたま入った楽器店に台湾製のものがあったので入手した。試すとよく音が伸びていい感じだ。特に高い音が楽に伸びる。そして楽器の鳴り方も変わる。つまっていた感じは開かれる。広い場所で試してみると、それほどの差はない気もするし、地に足が着いていない気もする。一長一短かな。
オーディオ用に磁石の反発を利用して浮かせるインシュレーターがある。あれをストッパーに応用したらどんなだろう。

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最近読んだのは大崎茂芳著「クモの糸でバイオリン」。とても興味深い内容。実際にクモの糸で弦を作りヴァイオリンに張って、倍音の出方を計測し、金属弦やガット弦と比較する。クモの糸は様々な成分の倍音が多く出る、どんな音だろう。ヴァイオリンのd線での比較で、金属弦は高い成分の倍音が出、ガットは1オクターブ上の倍音が多く出てその他はあまり出ない。これはとても納得できる結果だ。金属弦のしゃりしゃりと高い倍音が出て、特にチェロの低い音ではそれでようやく輪郭がはっきりする感じ、ガットの太いけれどちょっと暗い感じ。既存の弦の構造の電子顕微鏡写真もあった。

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2016年8月11日 (木)

スペシャルのドルチェ

何年か前まではわりと熱心に、新しい弦が出れば試していた。その他にもあのエンドピンこのエンドピン、あの部品この部品、あの松脂この松脂、・・・・・。もう少し前は誰か素晴らしいチェリストがいると、どんな楽器を使って、どんな弦を張って、どんな部品を使って、ということにとても興味を持っていた。
今はあまり気にしない。目に見えていることはそんなには重要でない、と気づきはじめたのだと思う。

自分の楽器や弓のセッティングに細かく気を使っていた時期は長かった。今は、もちろん大切に扱うけれど、楽器や自分や音楽が自然に整っていくような弾き方ができたら、と思っている。このところ楽器に手を入れることはあまりないし、弦も古典的なものを使い、松脂は以前ご好意で頂いた缶入りのベルナルデルを家宝のようにしている。弦を変えたくないのは、別のものを使い始めるとスペアも新しく用意しなくてはならないし、最初は良くても使っていくうちに楽器が鳴らなくなる、という残念な経験をしたことにもよる。

あまり道具を気にせず、身一つでさっと演奏に入れるようになったら本当に素晴らしいなと思う。

こんなふうに考えるようになったのは、年末に放送された沢木耕太郎さんのラジオを聞いたことが大きい。毎年1回、深夜のj-waveで放送される番組を僕は楽しみにしていて、昨年とても印象的だったのは、より深い自由を、という話だった。それは沢木さんが贈られた腕時計の話に始まり、結局今は安価なものを使っている、ということから自由とは、とつながっていったと記憶している。沢木さんは直接そういう言葉を使っていなかったけれど、僕は放送の後しばらくして、こだわらない、こだわることからの自由、ということなのかな、と思った。

もう一つ、昨年のツール・ド・フランスで。確かドイツ人の選手だったと思う、その日調子良かったのに自転車にトラブルが起き、途中で同僚から差し出された、必ずしも彼にはフィットしていないはずの自転車に乗り換えた。結局最後まで見事な走りをみせ、ステージ優勝をとげた。この大きな自転車レースでは連日200キロ近い距離を走るのに、大差で勝負がつくことはあまりない。だから道具がフィットしているかどうかはきっと切実な問題だと思うのだけれど。毎年ツール・ド・フランスを見てしまうのは、様々なことを超えていく人間の力の強さを感じる時があるからだ。

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何かが定まったのか、あるいは無関心になっただけなのか、この1、2年楽器や弓に関しては何も変化がなく、落ち着いた気持ちでいたのだけれど、最近a線の硬く薄い感じが気になるようになった。ヤーガーの短所が目立つようになってしまった。思ったより歌わないし踏み込める奥行きもほとんど無い。僕の乏しい能力のせいだけではないような気がした。

ヤーガーのa線d線の最大の長所は倍音の素晴らしい伸びだ。だから僕は新製品が次々に出てきても、結局この古典的な弦に戻ってきた。ただ、その倍音の伸びは神経質な性格と表裏の関係にある。
ラーセンが出た時は衝撃的だった。無理がきくし、強く踏み込んでも音がつぶれない。こんなに素晴らしい弦があるのかと思った。だから上2本をラーセン・下2本をスピロコア、あるいは4本ともにラーセンという組み合わせは今のスタンダードになっているし、実際素晴らしいと思う。(もし一つ難点を挙げるなら、ラーセンとスピロコアを組み合わせた時、その境となるd線とg線の五度音程が、なぜかとても合いにくくなる)
不思議なのは、その穏やかで力強いラーセンを張っていると、いつの間にか楽器がこもる感じになる。これは楽器によるのかもしれない。そんな時ヤーガーを張ると潤いが戻ってほっとする。こんな揺れ動きを数年の長い周期で繰り返してきた。

今回はラーセンにする気は起きず、ヤーガーのスペシャル、その中のドルチェ(張力が低い)に思い至った。
以前ヤーガーのスペシャルが出た時、早速試して素晴らしいと思った(フォルテの強さにミディアムの倍音の伸びをあわせ持つ)のだけれど、張りが強すぎるのか、やがて低音が鳴らなくなった。弦は難しい。

ヤーガー社のホームページにはそれぞれの弦の太さと張力が公開されている。
http://www.jargar-strings.com/products/cello/
おもしろいことにクラシック、ミディアムのa線d線とスペシャルのドルチェのそれは太さが一緒だ。スペシャルのドルチェ、なんてちょっと屈折した感じがするけれど、張って2週間ほど使った感触はとてもいい。深く落ち着いた音色でよく歌う。

そうして弦を変えた頃、松脂に関して新しいことがあった。さんざん松脂を試した僕は結論として、いざと言うときは宝物のような缶入りのベルナルデルを使い、普段は重野さん特製の黒い松脂を使っている。
ある方がニーマンの松脂を教えてくださった。コントラバス用のものが知られているようだけれど、そうではなくヴァイオリン用。弓の毛と弦が経験しなかったほど密接につながり、何年も使ってきた弓の印象が変わった。毛と弦が親密になり過ぎて、ヴァイオリンではぐぎぐぎの音になってしまうのでは、と要らぬ心配をしてしまう。思いの外影響が大きくて、使う弓も弾き方も変わってしまった。まさか松脂が弾き方へのヒントになるとは。

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いつの頃からか、演奏会のプログラムやCDのライナーノーツには演奏者の使用楽器が記されるようになり、楽器の市場には様々な資金が入って、名器と呼ばれるものはほぼ、個人の手の届くものではなくなってしまった。僕はできることなら、弘法筆を選ばず、という人間になりたいと思っている。でも今回のことは大きく僕を進ませてくれた。
今はこんな風に考える。その楽器や弓の金額や市場価値の多寡に関係なく、その人にとってかけがえの無い存在になったとき、きっと何かが始まるのだと思う。

2016年4月 2日 (土)

弦を伸ばす 6

弦伸ばし器で3週間ほど伸ばしたオイドクサは果たして、期待通りの状態になっていた。初期伸びは2日で落ち着き、音も初めから明るい。僕の使っているチェロは、G線の第4ポジションのミの音にウルフが出る。オイドクサを張るとその傾向がより顕著に出やすい。そのミやファあたりが凸凹とした感じになる。それが伸ばしておいた弦では、反応が全てのポジションで一定になり、扱いやすい。

ところで、先日ヤーガーの弦を買ったらパッケージが変わっていて驚いた。しかもこれまでなかった「CLASSIC」なんていう記載までされている。specialやsuperiorとの違いをはっきりするためだろうけれど、classicなんて言われてしまうと、確かに僕は古いものが好きで、写真もフィルムで撮るのが楽しいし・・・。
長いこと馴染んだ(もしかして30年くらいになるのかも)古いパッケージが懐かしい。

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2016年2月26日 (金)

弦を伸ばす 5

特製弦伸ばし器で2週間ほどゆっくり伸ばしたヤーガーの1、2番線は、予想に違わず張った時からぱりっと明るく、反応が早い音の出方だった。張りたてのヤーガーの2番線はいつも鈍い感じがあり、それがだんだん開いていくのだけれど、伸ばしておいた弦にそういう含みの部分はなく、全てが白日のもとにさらされている感じだった。

次にスピロコアの3、4番線をやはり2週間ほど伸ばして張ってみたら、あのスピロコア特有の金属的な音がさらに多い感じで、数日我慢すれば良いことなのかもしれないけれど、耐えられず5分も弾かないうちにオイドクサに戻してしまった。僕は思っていたよりガットに馴染んでいるのかもしれない。

スピロコアに限らず、金属弦のしゃりしゃりとした倍音の成分が音の輪郭を形づくり、それが離れていてもぼやけない低音を生み出すのでは、と思っている。でも久しぶりに張ったスピロコアは、手元の変化に乏しく、なんだか楽しくなかった。弓毛と弦との接し方でつくる子音の種類が少ない気がするし(離れて聞くとまったく差は感じられない程度かもしれないけれど)、何よりピチカートの幸福度がまったく違うもの。

そして、ようやく新しいオイドクサを調達し、伸ばし始めた。
今までは気にしていなかったのだけれど、パッケージから出した新品の弦はまず、テンションをかけない状態でしばらく伸ばしてみることにしている。するとオイドクサの4番線は素直にまっすぐなのに、3番線は螺旋状にねじれる癖が強くついている。これはたまたまの個体差なのかもしれないけれど、いずれにしても弦は捻れの無い状態で張った方がいいだろうし、3番線の方が湿度の影響を受け易いのもこの違いからきているのかも、と思った。
今の目論見は、丁寧に伸ばしたオイドクサが驚くほど反応の早い"現代的な"ガット弦になること。ガットの新しい世界が見えたら、いいなぁ。

2016年1月26日 (火)

弦を伸ばす 4

待ちに待った日が来て、重野さんに糸巻きを取り付けて頂いた。弦伸ばし器の完成だ。何だか思ったよりいい。

まずヤーガーの1番線2番線を伸ばしてみよう。結果が出るのは来月。思いもよらない発見があるか、たいして変わらないか、どちらかというと悪いか、まぁおそらくどれかだと思うけれど、とにかく楽しみ。

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2016年1月25日 (月)

弦を伸ばす 3

結局、細長い箱を作って一方の端に弦を留める穴を4つ(二つはガット弦用の太いもの、二つはスチール弦用の細いもの)開け、他方の端にチェロの糸巻きを二つつけることにした。ここの工作はとてもできないので重野さんにお願いすることにして、東急ハンズで材料を加工してもらった。

久しぶりの工作は、切ってもらった材料を少し削って貼り付けただけ、そしてそこここに大量にボンドがはみ出ている。でも楽しかったなぁ、微妙に反っている板を踏んづけて固定したりして。 (続く)

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2016年1月24日 (日)

弦を伸ばす 2

弦をあらかじめ伸ばしておいてから楽器に張る、というアイデアを父に話したら、さらに、新品の弦をいきなり所定の音程まで上げるのではなく、ゆっくり時間をかけて伸ばしてはどうか、という考えが出てきた。
(シンバルを製作する際、ほぼ出来上がった状態で一年寝かせる、ということを聞いたことがある。寝かせたものとできたてのものを比べると、明らかに音の伸びが違った。金属の中でいろいろなことが起きるらしい。)
ガットだけでなく、金属あるいはナイロン等でできている弦でも、最初から要求される音程に上げるのと、ゆっくり上げていくのとでは音質に違いが出てくるかもしれない。例えば張りたてのガットのもぞもぞした感じは言うまでもなく、ヤーガーの少しこもった感じ、新品のスピロコア特有のしゃりしゃりした感じが違うものになるかもしれない。
もう一つ、チェロの新品の弦は紙の包装のなかにくるくる丸めて、時には端をからめて入っている。もしかして使うしばらく前にこの状態を解いて、だらりとさせておいたら何か違うことはないだろうか。少なくともねじれは無い方がいい気がする。

そう思うとじっとしていられなくなって、使えそうな材料を探しに出かけたり、スケッチを書いて重野さんに助言を求めたりした。
いろいろな方法が考えられる。何も決まっていないし、自分で選んでいけばいい。弦にどうやって張力をかけようか。適当なウォームギヤを組み合わせる(弦を掛ける部分をどう作ったらよいだろう?)、あるいはコントラバスやギターの糸巻きを流用する(コントラバスのものは大がかりだし、ギターのは軸が細い気がする)こともできそうだ。 (続く)

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2016年1月23日 (土)

弦を伸ばす 1

ガット弦を使う時の問題は、湿度・温度の影響で音程が変わりやすいことに加えてもう一つ、初期伸びが大きく、馴染むまでに時間がかかることだと思う。

子供の頃、楽器店でヴァイオリン用の弦伸ばし器を見た。金属の棒の一方の端にに4本の弦をかけておく部品があり、他方にはギターに使うような糸巻きがついていた。当時もちろんガットなんて使ったことがなかったし、この面倒なものは一体何?大人は不思議なことをする、と思っただけだった。
先日ふと、その弦伸ばし器のことを思い出した。あれにはもしかして馴染むまでの時間を短縮するだけでなく、他にも働きがあるのでは、と思い至った。

弦を楽器に張ると糸巻きから上駒まで、上駒から駒まで、駒から尾止めまで、の3つの部分に大きく分かれる。そして上駒から駒までの部分には演奏上の様々な負荷がかかるし、上駒や駒の真上の弦にも複雑な力がかかるはず。だから伸びていない新品の弦を楽器に張ると、弦はそれぞれの部分で異なった力を受けて伸びていくことになる。
ではもし、弦伸ばし器で全体を一定に伸ばしておいてから楽器に張るとどうなるのだろう? (続く)

2015年7月13日 (月)

こだわらないように

実は何ヵ月も前から僕のチェロの表板には弓の毛箱が激突した傷がついていた。やれやれ。
そこに先日、弓とピチカートの持ち換えの忙しい曲を合わせていたら、右手の爪で表板をがりっ、と・・・。一人でさらっている時にこんなことは起きないのに、どうも力が入るらしい。
あまりに恥ずかしいので、重野さんに連絡して翌日きれいに修復して頂いた。

同時に5ヶ月ぶりに弓の毛替えもお願いした。いつもはもう少し短い間隔でするのだけれど、最近ガット弦を使っているせいか、弓毛が目詰まりしないので、相変わらず毎日いい調子と思っていた。
それが、別の弓のようにしっとりした感触になって驚いた。

最近心がけているのは道具にあまりこだわらないようにすること。だからと言って楽器の傷を放ったらかしにしていい、ということはないのだけれど。
以前は弦も定期的に交換するようにしていた。それは確かにヤーガーの1番線なんかは新しい方が弾力があって、圧倒的にいいもの。ただ、オイドクサのようなガットを使っていると、元からけっこうゆるい感じだし、定期的に新しくしなくても、という気がしてきた。

先頃渋谷のマリオルッチから、今月末で店舗での営業を一時閉める、と連絡がありhttp://www.mariolucci.com/kyugyou.html、慌てて弦を買いに行った。ヤーガーはもともと少しストックがあったので、オイドクサを1本ずつ、あと少々。これで今年は過ごせるかな。

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