新聞

2023年11月11日 (土)

7月の日経新聞から

2023年7月を振りかえってみる。

7月31日日経夕刊から、
『世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は2023年7月の世界の平均気温が観測史上で最高となる見通しだと発表した。観測記録のない太古の気候を探る研究者は「地球の平均気温はおよそ12万年ぶりの最高気温を記録した」と温暖化の進行に警鐘を鳴らす。』

7月6日日経朝刊に掲載された、英フィナンシャルタイムズ紙の記事から、
『世界の原生熱帯雨林の消失面積が2022年に前年比10%増加したことが新たな調査で明らかになった。全世界で木々が失われた面積の合計はスイスの国土に相当する。』

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7月12日日経朝刊から、
『世界を襲う熱波が広がり、干ばつや水害などの異常気象が増えている。世界の平均気温は過去最高を更新し、南米ペルー沖の海水温が上がる「エルニーニョ現象」で今夏は気温がさらに高まる可能性がある。専門家はエルニーニョによる経済損失は2029年までに最大3兆ドル(約420兆円)にのぼると見積もる。』
『国際学会「国際地質科学連合(IUGS)」の作業部会は11日、人類活動が地球環境に大きな影響を及ぼす時代「人新生」を20世紀半ばからの新たな地質年代とし、代表地にカナダ東部の湖を選んだと発表した。』

7月1日日経朝刊から、
『東京大と山梨県富士山科学研究所のチームは30日、これまで活動の空白期と考えられていた5千~4千年前に富士山が少なくとも6回噴火していたことを確かめたと発表した。山梨県側の麓にある山中湖の湖底で、未知の噴火による火山灰を確認した。』

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7月7日日経朝刊から、
『東京大学は米領グアム沖の深海で熱水が噴出する場所にある岩石から新しい細菌を発見した。細胞内に磁石を持ち、コンパスのように地磁気を感じて回転する「走磁性細菌」の一種だった。』

7月5日日経夕刊に掲載された中川恵一さんの「がん社会を診る」という記事から、
『1万年以上前から日本列島に住んでいた縄文人と、約2~3千年前に朝鮮半島から渡来した弥生人との混血が日本人のルーツといわれます。
47都道府県で縄文人由来と渡来人由来のゲノム比率を調査した研究があります。縄文人由来のゲノム成分比率が最も高かったのは沖縄県で、鹿児島、青森、岩手が続きました。渡来人由来のゲノム成分が最も高かったのは滋賀県で、京都や奈良などが続きました。』

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7月29日日経朝刊から、
『2022年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳となり、前年比で女性は0.49歳、男性は0.42歳それぞれ縮んだことが28日、厚生労働省公表の簡易生命表で分かった。前年を下回るのは男女とも2年連続。同省は「新型コロナウィルス流行の影響が大きい」としている。』

7月11日日経朝刊から、
『京都大学などは新型コロナウィルスの流行が未就学児にもたらした影響を解析した。5歳の時にコロナ禍を経験した幼児では、発達が平均で約4カ月遅れていた。3歳の時に経験した幼児では明確な差はなかった。
・・・5~6歳の幼児で発達が遅れた要因として、研究チームは他者との交流の減少を指摘している。』

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7月7日日経朝刊から、
『米フロリダ大学は宇宙飛行が脳に及ぼす影響に関する調査結果をまとめた。30人の宇宙飛行士を対象に調べ、2週間の短期飛行では変化しなかった「脳室」と呼ぶ部位の空間容積が6カ月の長期滞在になると拡大することなどが分かった。脳室の拡大で脳内の圧力が高まると、意識障害や視力障害などにつながる懸念がある。』

7月4日日経朝刊に掲載された「春秋」から、
『脳は使わなくなれば、しだいに機能が低下する。・・・狩猟採集時代が終わって農耕社会に移った後、ヒトの平均的な脳のサイズは小さくなった。約3000年前のことだ。2021年に米研究チームが発表した論文によると集団生活の影響らしい。』

7月27日日経夕刊から、
『「文字の形が覚えられず、中学生になっても書くのが苦手だった」。こう話すのは大学3年生の西川幹之佑さん(20)。読み書きに困難を感じる「ディスクレシア」だというが、一つの書体との出会いで見える世界が変わった。「UDデジタル教科書体」だ。・・・
 西川さんは明朝体など横線の細いフォントを識別しづらかった。しかし中学生の頃、UDデジタル教科書体だけは難なく読めることに気付く。「読めない自分がいけないと責める必要がないと思えた」と当時を振りかえる。』

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7月22日日経朝刊から、
『アイルランドで4千人を超す50歳以上の人たちの協力を得て10年近くかけて行われた研究では、運動していた人たちは運動をしていなかった人に比べて気分が沈み込みがちになる割合が明らかに少なかったという。うつ病の発症率でみると、4割以上少なくなっていた。』

7月14日日経朝刊に掲載された「AIは異星人の知性」というマルクス・ガブリエルさんの記事から、
『「我々の欲望は今や、監視資本主義のシステムにつくり出されているといえる。監視者はスマートフォンという独房にいる人々に情報を送り、特定の行動をするよう促してくる。スマホの利用者は監視者の意図が分からないまま無意識に動かされている。この新しいパノプティコンは非常に強力だ」
 ・・・・・
「ニヒリズムは『人間が存在することに意味はない』という。だが、私たちが生まれてきたことに意味があろうがなかろうが、神が存在しようがしまいが、我々は道徳的真実を見つけ出し、それを実践しなければならない。我々には未来を守る義務がある。それが『人生の意味とは何か』という問いへの私の答えだ。」』

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7月22日日経朝刊に掲載された若松英輔さんの記事から、
『・・・手だけで書かれた文章は、あるとき人を驚かすことがあっても、その人を生の深みに導くことはない。いっぽう、どんなに素朴な姿をしていても、その人の生に裏打ちされた言葉は、予想をはるかに超える働きをすることがある。』

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7月13と14日の日経夕刊に掲載されたお化け屋敷プロデューサー、五味弘文さんの記事から、
『お客様の心理に働きかける工夫としては、入り口で履いてきた靴を脱いでもらう方法があります。靴を脱ぐと人は何かを奪われたような感覚になって急に心細くなる。足の裏で床の冷たさを感じさせ、柔らかいとか硬いといった触覚を刺激するとそれが恐怖につながります。人はこうしたことで自分の身体が名状しがたいものにさらされるように感じ、恐怖を覚えるのです。』
『人間の恐怖心は持続せず、せいぜい10分が恐怖が続く目安とされています。このためお化け屋敷も入り口から出口まで体験時間として10分程度で企画され、料金は1000円程度が相場です。これはこれで長い間に確立された優れた娯楽の形態なのですが、もっと長く恐怖体験を味わえるお化け屋敷ができないかと考えています。』

7月21日日経夕刊に掲載された古書修復家、板倉正子さんの記事から、『書物修復の技術は、世界各地の専門家が創意工夫、試行錯誤を重ねながら進歩してきました。私が誇りに思うのは、それらの技術が基本的に公開され、共有されていることです。私たちも書物1冊ごとにカルテを作成し、どんな手当を施したのか、詳細に記録を残すようにしています。』

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7月10日日経夕刊に掲載されたセコマ会長、丸谷智保さんの記事から、『私どもの会社は北海道を基盤に1200店ほどのコンビニエンスストアを展開している。・・・
 コロナ禍に有ってもセコマの売り上げは堅調だったが、そのことを言いたいのではない。地域にしっかり密着してやってきたつもりだったが、「足元には、まだこんなにもお客様がいたのか」ということを、奇しくもコロナ禍で気づかされたのである。
 実際はマーケットはとても深い。商圏は平面に住む人口の多寡ではなく、いかにそのマーケットに浸透しているかによって変わってくる。500万道民が毎日来店してくれれば年18億人を超える。あれ?それって中国の人口よりも多い?』

2023年11月 9日 (木)

6月の日経新聞から

2023年6月を振りかえってみる。

6月30日日経朝刊から、
『オランダのラドバウド大学などは、新型コロナウィルスの流行で世界的に外出自粛などの対策が実施された2020年初めに、野生動物が自由に動き回っていたとの調査結果をまとめた。
 ・・・・・
 20年と19年の2~4月を比較したところ、ロックダウンなどで移動制限が厳しかった地域で動物の移動距離は平均73%長くなった。道路の交通量が減り、移動しやすくなったとみられる。』

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6月20日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの一部を鼻で感染させると、脳内炎症を引き起こすことがマウス実験で判明したと、東京慈恵医大のチームが19日までに米科学誌に公表した。倦怠感やうつ症状などのコロナ後遺症を発症する仕組みの一つとみられるという。既存の認知症薬がこうした症状を改善させる可能性があるとして、臨床試験を進めている。』

6月22日日経夕刊から、
『全米教育統計センターが21日発表した学力調査によると、中学2年生に相当する13歳の読解と数学の学力が新型コロナウィルス流行前と比べて大幅に下がったことがわかった。特に数学はもともと学力が低い生徒の落ち込み幅が大きく、人種別では低所得層が多い先住民や黒人、ヒスパニック系の低下が目立った。コロナ禍を経て学力格差が広がっている様子が浮き彫りとなった。』

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6月2日日経朝刊から、
『魚介類の水揚げが減り続けている。農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、2022年の漁業と養殖業の合計生産量は前年比7.5%少ない385万8600トンだった。減少は2年連続で、統計を取り始めた1956年以降の最低を更新した。海水温の上昇による環境の変化が影響を及ぼしている。』

6月19日日経夕刊から、
『食卓に欠かせないオリーブオイルの価格が急騰し、史上最高値を付けている。主産地のスペインで昨年夏以降の干ばつで原料となるオリーブの収穫量が半減。今年も平年を下回る降水量が続き、昨年に続く大不作の恐れが出ている。』

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6月29日日経朝刊から、
『カナダ東部で続く山火事の煙がスペインなど欧州西部に到達している。米航空宇宙局(NASA)の一般向け情報提供機関であるアースオブザーバトリーが26日、明らかにした。』

6月11日日経朝刊に掲載された世界気象機関(WMO)事務局長、ペッテリ・ターラスさんの記事から、
『「高温をもたらすエルニーニョの発生と人間活動による気候変化が相まって、地球の気温は未踏の領域に入るだろう」。2023~27年の予測を盛り込んだ最新の気候報告書の公表に合わせ、警鐘を鳴らした。』

6月28日日経朝刊から、
『世界気象機関(WMO)によると、2010年代に世界で発生した自然災害は3165件と、1970年代の5倍近くに増えた。うち8~9割は暴風雨と洪水が占める。気候変動による水の脅威の増加に世界全体が身構えている。』

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6月13日日経朝刊から、
『「国民病」となった花粉症による経済損失が3800億円を超える可能性があることが、民間試算で明らかになった。政府は5月に健康被害と経済損失を抑えるための対策を打ち出した。花粉発生源のスギの伐採や植え替えの促進を柱とする。』

6月11日日経朝刊から、
『海洋汚染で注目される小さく砕かれたごみ「マイクロプラスチック」。人の体内から見つかったという報告が相次ぎ、環境問題から健康問題へと広がりを見せている。形状や含まれる化学物質、体内に取り込む量など様々な要素がからみ、その長期の毒性の解明は簡単ではない。』

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6月23日日経朝刊から、
『京都大学は細胞を組み立てて立体的な組織をつくる「バイオ3Dプリンター」を使い、傷ついた指の神経を治療することに成功した。気道などの器官や臓器そのものを再生する研究も国内外で進む。20~30年後に臓器を作って移植する技術ができれば、健康寿命を延ばせる可能性がある。』

6月10日日経夕刊から、
『厚生労働省は10日までに、海外に渡航して臓器移植を受けた後に国内の医療機関に通院している患者が3月末時点で543人おり、うち25人の移植には4つの仲介団体が関与していたと明らかにした。・・・
 20年以上前に移植を受けた人も含め、過去5年間に38人が死亡、移植した臓器が機能不全になったのは25人だった。』

6月26日日経朝刊から、
『神経難病の一つ、パーキンソン病のため歩きにくくなってきた人にリハビリを行う際、歩くリズムに合わせて頭の外側から脳に電気刺激を与えることで歩行機能が改善したと、名古屋市立大などのチームが25日までに、英医学誌に発表した。』

6月23日日経朝刊から、
『東京農工大学とエステーなどは、特定の匂いを感じにくくする香料が存在することを実験で確かめた。香料があると鼻にある匂い物質の受容体が反応せず、悪臭でも感じにくくなった。』

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6月20日日経朝刊に掲載されたマレーシア元首相、マハティール・ビン・モハンマドさんの記事から、
『日本は不思議だ。米国に原爆を落とされたのに彼らとは友好国で、国内に米軍基地もある。なぜ中国や韓国と同じように親しくなれないのか。日本と中国、韓国には歴史的な問題はあるだろうが、過去に固執せず、今と未来を見据えて外交に臨むべきだ。残虐な歴史ばかりに目を向けると、過去に支配されてしまう。』

6月10日日経夕刊に掲載された歌人、馬場あき子さんの記事から、
『「女性の生き方には大変なものがあったけれど、60年前にはがんばれば良い世の中が来るという希望があった。今の歌人をかわいそうに思う。今は、歌いにくい時代です。複雑で、どこをどう愛したらいいかとても難しい」。』

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6月13日日経夕刊に掲載された医師、小笠原文雄さんの記事から、
『普段からお経を読んでいるので集中力がありました。お経を読んでいるといわゆるゾーンに入るんですね。だから勉強でもゾーンに入るんです。日曜日などに寺でひとりで勉強しているときに、檀家さんが訪れることがあります。しかし、勉強に没頭していて全く気が付かない。』

6月13日日経夕刊に掲載されたプロ野球ヤクルト、村上宗隆さんに関する記事から、
『王会長によれば、本塁打を量産しているとき、本人は案外淡々としているものだそうだ。なぜあんなに打てるのか、と周囲を驚かせても「本人にとっちゃ不思議じゃない。不思議じゃないから、もっともっと打てるわけでね。自分が感激したり、興奮したりしてるようじゃ打てなくなっちゃう」。』

6月3日日経朝刊に掲載された若松英輔さんの「セザンヌとモチーフ」という記事から、
『・・・少なくない言葉を発したあと、彼は最後にこういう。「要するに私というものが干渉すると、凡ては台無しになって了う。何故だろう」。』

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6月10日日経朝刊に掲載された若松英輔さんの記事から、
『経歴や過去の実績の話を得意げにされると興ざめになる。そこに立ち顕われるのは、影のようなもので、今、生きているその人ではない。過去を誇る人は、もっとも魅力があるのはかつて行ったことではなく、それらを昇華させ今、ここに存在しているその人自身であるのを忘れている。』

6月28日日経夕刊に掲載された将棋棋士、谷合広紀さんの記事から、
『この対局における藤井聡太七冠の凄まじさは、局面を一気にひっくり返す神の一手ではなく、相手がミスを犯しそうな局面に誘導する巧さにあった。相手にとって複数の有力手が見えるが、そのうちの一手が実は罠という局面にうまく誘導するのだ。こういった指し回しは現在の将棋AIを持ってしても定量化できていない部分である。正確な指し回しはもちろんのこと、人間的な勝負術にも長けているという点が藤井将棋の本当に恐ろしい部分だと思う。』

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6月9日日経夕刊に掲載された文筆家、寺尾紗穂さんの記事から、
『森崎和江「ははのくにとの幻想婚」に収録されている八幡製鉄所の労働者の聞き書きには、こんな言葉が出てくる。
「そりゃあ、おまえらが提出した資料や指令にもとづいてやっちゃいるさ。しかしな、鉄は生きもんだからな、計算器の結果どおりにいくかい。同じ原料でも炉の雰囲気が瞬間ごとに変化しているんだし、出てきたときはその度にかすかに質がちがうとばい。それを指令どおりに一律にやってみい。最後の工程じゃおまえの結果とは全然ちがうものになっているんだから」。』

2023年8月16日 (水)

4月の日経新聞から

4月を振り返ってみる。

 

4月18日日経朝刊から、
『タイヤ世界大手の仏ミシュランのフロラン・メネゴー最高経営責任者は、タイヤの摩耗により生じる粉じんが規制される見込みの欧州連合の新たな排ガス規制に関して、「我々が長年取り組んできた課題だ」との認識を明かした。タイヤ業界では事業への懸念もあがるが、粉じん抑制をめぐる規制のあり方について、同社がリードしていく考えも強調した。』

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4月20日日経朝刊から、
『国連人口基金は19日、インドの人口が2023年半ばに中国を抜いて世界最多になるとするデータを公表した。インドは14億2860万人、中国は14億2570万人と推計しており、インドが約290万人上回る。』

4月27日日経朝刊から、
『国立社会保障・人口問題研究所は26日、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表した。2056年に人口が1億人を下回り、59年には日本人の出生数が50万人を割る。』

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4月10日日経朝刊から、
『東京都が新型コロナウィルス感染症に関して都内に住む20~70代にアンケートを実施したところ後遺症を疑う症状が2カ月以上あったとする回答が25.8%に上った。割合は若年層ほど高かった。』

4月13日日経朝刊に掲載された、英国薬剤耐性特使サリー・デイビスさんの記事から、
『薬剤耐性(AMR)関連の死者数は世界で年間400万人以上に達する。心臓病、脳卒中に次ぐ死因の第3位となっており、「静かなパンデミック」とも呼ばれる。新型コロナウィルスの感染拡大に気をとられている間に抗菌薬の使用が韓国などで劇的に増えた。結果として病原菌の耐性は高まり、状況は悪化したと考えられる。』

4月1日日経夕刊から、
『内閣府は31日、自宅にいる15~64歳のひきこもりの人は、全国に146万人との推計値を公表した。半年以上、家族以外とほとんど会話をしないなどの人と定義。5人に1人が新型コロナウィルスを原因に挙げた。』

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4月18日日経朝刊から、
『人工知能開発スタートアップのアラヤとホンダ子会社の本田技術研究所は自動車運転時の脳活動の分析に成功した。運転が得意な人は物体の位置や動きを把握する能力が高く、危険予測が早いことがわかった。・・・
 ・・・運転が上手な人は空間認知をつかさどる脳の部位が一般の人よりも早く反応していた。』

4月24日日経夕刊から、
『国立障害者リハビリテーションセンターによる発達障害者の感覚をめぐる調査で、特定の音が苦手といった聴覚過敏が「最もつらい」との回答が53.7%を占めたことが分かった。複数人の会話が苦手な人も見られる。』

4月5日日経夕刊から、
『氷で患部を冷やす「アイシング」は、けがの程度が軽い場合は筋肉の回復を促すとの研究結果を神戸大の荒川高光准教授らのチームが5日までに発表した。チームによると、これまでアイシングの効果について十分な科学的根拠は示されていなかった。』

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4月22日日経夕刊から、
『地球の約6分の1である月面の重力があれば、体を支える筋肉の量が減るのを抑えられる一方、持久力が弱まるといった筋肉の質的な変化は抑えられないとの研究結果を、筑波大と宇宙航空研究開発機構のチームが21日、発表した。将来の有人月探査などに向けた基礎データになるとしている。』

4月19日日経夕刊から、
『脳は、目で見た物から刺激を受ける。その反応を分析し、人の手ではなくコンピューターによって、見た物を画像にする研究を大阪大の高木優助教(システム認知科学)らが進めている。・・・
 まず見た刺激を受け取るのは後頭部にある初期視覚野。この反応から粗い画像を作り出す。
 次に見た情報を解釈するのが脳底部の高次視覚野。この反応から「クマ」や「空を飛ぶ飛行機」などの意味を読み取る。2つを組み合わせて画像化する。』

4月23日日経夕刊から、
『京都大病院の池口良輔准教授らのチームは25日までに、細胞を材料にして立体的な組織をつくる「バイオ3Dプリンター」で細かい管を作製、手の指などの神経を損傷した患者3人に移植する治験を実施し、神経の再生を確認したと発表した。副作用や合併症はなかった。』

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4月2日日経朝刊から、
『探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った試料を調べた初期分析が完了した。液体の水やアミノ酸といった生命の起源に迫る物質を見つけたほか、太陽系の成り立ちを知る手がかりを得た。』
『東北大学などの研究チームは森林の地面に生えたキノコに電極を取り付け、会話とも思える電位の変化をとらえた。雨をきっかけに電位が大きく変化し、隣のキノコに伝わっていた。』

4月9日日経朝刊から、
『長崎大学などの研究チームは海底に生息する甲殻類の一種である「オオグソクムシ」が1回の餌で約6年間生きられるだけのエネルギーを摂取できる可能性があることを突き止めた。最大で体重の45%にあたる量をとるという。・・・
 水温セ氏10.5度で、一般的な大きさの体重33グラムの場合、1年間のエネルギー消費量は約13キロカロリーだった。ご飯に換算すると10グラムにも満たない。』

4月26日日経朝刊から、
『災害時に飛行機型ドローンを飛ばし、被災状況を高速撮影する活動を続けるNPO法人「クライシスマッパーズ・ジャパン」。古橋大地理事長は撮影した地図データを国や消防などに提供、救助活動を後方支援する。』

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4月27日日経夕刊から、
『身長約6.1メートルの巨体とまっすぐに伸びた白い手足、無表情の顔。名古屋駅前の巨大マネキン「ナナちゃん」が今月28日、50歳の誕生日を迎える。百貨店の宣伝のために建てられたが、やがて駅のシンボルに成長した。』

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4月25日日経夕刊から、
『月刊音楽誌「レコード芸術」が7月号(6月20日発行)で休刊すると発表し、波紋が広がっている。・・・
 ピーク時には月間約400作品のクラシックCDが発売され、批評の対象となっていたが、現在は100作品ほどまでに減り、レコード会社からの広告出稿が落ち込んだという。読者の85%が50~70代で高齢化も進む。』

4月18日日経夕刊から、
『時間貸し駐車場(コインパーキング)の駐車料金が上昇している。新型コロナウィルス下で駐車場数が減った中で利用が回復し、東京23区では平均料金がコロナ流行前を約1割上回る。』

4月30日日経朝刊から、
『ChatGPTなど話題の生成人工知能(AI)は人間のような自然な文章やイラストをつくりだす。脳の神経回路の働きをモデルとする「深層学習(ディープラーニング)」と呼ぶ技術が基盤となる。登場して20年近くたつが、なぜ優れているのかはわかっていない。数学や統計学を駆使して謎解きに挑む研究が進んでいる。
 「深層学習はなぜうまくいくのか。正直に言えば、よくわからないところがある」。深層学習の原理解明に取り組む東京大学の今泉允聡准教授はこう話す。』

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4月29日日経プラス1に掲載された小説家、小川洋子さんの記事から、
『「物語は世界のどこかに、ひっそりとあらかじめ存在しているのだと思います」。例えばそれは、はるか遠い場所にある太古の時代からの洞窟の壁画のようなもので、誰かが見つけてくれるのをひそかに待っている。「自分はなんとか洞窟にたどり着いて、それを描写するだけ」』

4月3日日経夕刊に掲載されたハイデイ日高会長、神田正さんの記事から、
『私も中学生と偽り、小学6年生から4年間、週末はキャディーをして家計を支えた。・・・
 貧乏暮らしでツイてない人生だと思ったが、人を見極める目を養えたのは収穫だった。クラブの受け取り方などちょっとしたしぐさに人格は表れる。飲食店を出店するときには大家から多額の保証金を求められる。返還されるとは限らないのだが、大家を見る目には自信があった。これまで一度もだまされたことはない。』

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4月13日日経朝刊に掲載された、村上春樹さんの記事から、
『「・・・僕自身は意識と無意識を行き来するうちに立体感をつかむという方法論をとっており、それまでの日本文学の流れとは異なる。・・・」
 「影というのは潜在意識の中の自己、もう一人の自分なのですね。相似形であると同時にネガでもある。それを知ることは自分を知ることになる。とりわけ長編小説を書く場合は(潜在意識を)深くまで掘っていく必要がある」
 「40年でフルマラソンを40回走った。体力は大事。もし走っていなかったら人生がどうなっていたかわからない。・・・」』

2023年7月 9日 (日)

3月の日経新聞から

3月を振りかえってみる。

3月21日日経朝刊から、
『国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が20日公表した報告書は、各国の温暖化対策の遅れに危機感をにじませた。産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達すると予測した。温暖化が進むほど水不足なども深刻になる。』

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3月1日日経朝刊から、
『厚生労働省が28日に公表した人口動態統計(速報)では、2022年の国内の死亡数、前年比の死亡増加数共に戦後最多となった。新型コロナウィルスによる死亡に加え、心不全などで亡くなる高齢者が急増している。
 22年の国内の死亡数は158万2033人で、前年より12万9744人(8.9%)増えた。』
『厚生労働省は28日、2022年の出生数が外国人を含む速報値で前年比5.1%減の79万9728人だったと発表した。80万人割れは比較可能な1899年以降で初めて。』

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3月21日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスの抗体保有率が全国で42.3%に上ることが、厚生労働省の調査で分かった。2月19~27日にかけて実施し、献血した人のうち一定の条件を満たした全国1万3121人から協力を得た。2022年11月に実施した調査から13ポイントほど上昇した。
 ・・・・・
 都道府県で結果に差がみられた。最も高かったのは福岡県で59.4%。沖縄県が58.0%で続いた。最も低かったのは岩手県で27.4%だった。』

3月26日日経朝刊から、
『米マッキンゼー・アンド・カンパニーは新型コロナウィルスによって2022年に米国の労働力が0.8~2.6%損なわれたとの試算をまとめた。』

3月30日日経朝刊から、
『会計検査院によると、新型コロナウィルスのワクチンの国内の接種実績は2023年1月時点で約3億7900万回分に上った。
 一方、有効期限切れによる廃棄や、需要減によるキャンセルも相次いだ。・・・21年度までに確保した8億8200万回分の3割が使われなかったことが判明している。』

3月6日日経朝刊に掲載された、モデルナ、ムーア最高科学責任者の記事から、
『人が感染しうるウィルスとして特定されているのは225あるが、ワクチンの開発されたのは25にとどまる。我々は全てのウィルスに対しワクチンを開発していきたい』

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3月11日日経夕刊から、
『気象庁は11日までに、東日本大震災の余震域で、昨年3月11日から今年2月28日までの約1年間に震度1以上の有感地震が計510回あったと明らかにした。マグニチュード4.0以上は計240回だった。
 ともに直近2年よりも増えたが、気象庁は全体としては減少傾向とみている。』

3月11日日経朝刊から、
『東京電力福島第1原子力発電所の事故処理費用が膨張を続けている。会計検査院によると2021年度までに約12兆円が賠償や除染、廃炉作業などに措置された。賠償や除染などの費用は22年度までに年1兆円規模となった。東日本大震災から11日で12年を迎えるが、廃炉や除染の道筋はなお見通せない。』
『東京電力は核燃料が溶けて固まった溶融燃料(デブリ)について、23年度後半に福島第1原発2号機からの取り出しに着手する。・・・
 東電などによると、事故で燃料が溶けた1~3号機全体でデブリは推計880トンある。』

3月17日日経朝刊から、
『ドイツが4月に「脱原発」の目標を達成する見通しになった。ショルツ首相は日本経済新聞の取材で、国内に残る原子力発電所3基の稼働を完全停止する方針を示した。「延長の選択肢はない」と明言し、脱炭素社会の実現に向けて風力などの再生可能エネルギーで国内電力を賄うと強調した。』

3月27日日経朝刊から、
『環境省は日本海溝・千島海溝沿いで想定されるマグニチュード9級の巨大地震に伴う住宅がれきなどの災害ごみは最大で2717万トンに達すると推計した。処理完了に3年かかった東日本大震災の約2千万トンを上回る。』

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3月3日日経朝刊から、
『政府による通信遮断や検閲によってインターネットの世界が分断する「スプリンターネット」が深刻になっている。米人権団体のフリーダムハウスが2022年にまとめた報告書によると、世界のインターネットの自由度は12年連続で悪化した。』

3月29日日経夕刊から、
『米国務省のパテル副報道官は28日の記者会見で、ロシアとの核軍縮条約に基づく一部の情報提供を停止すると明らかにした。ロシアが条約の履行を停止し、米国も対抗措置をとる。』

3月17日日経朝刊に掲載されたUSナショナル・エディター、エドワード・ルースさんの記事から、
『少し頭の体操をしたい。もし台湾が存在しなかったとしても米国と中国は対立していただろうか。筆者の直感では「イエス」だ。覇権国と新興勢力が対立するのは人類の歴史の一部と言っていいからだ。』

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3月29日日経夕刊から、
『名古屋大などのチームは、石川、三重、鳥取の3県の海で青紫色に発光するゴカイを新たに3種発見したと29日付英科学誌に発表した。青紫に光る生物は世界的にも珍しいといい、名古屋大の自見直人助教(分類学)は「発光のメカニズムを明らかにしたい」としている。』

3月5日日経朝刊から、
『日本で将来のノーベル賞候補となる先端研究人材が減っている。世界で注目される論文数はピークから2割近く減り国別順位で12位と2000年代前半の4位から後退した。』

3月25日日経朝刊プラス1に掲載された、デジタル認知障害の記事から、
『専門家が注目する原因の一つは01年にワシントン大学のマーカス・レイクル博士が発表した研究成果だ。レイクル博士は脳の活動を画像化する研究で、脳は「ぼんやり」しているときも相当なエネルギーを使っていることを解明。このとき脳は何もしていないのではなく、入力された情報を整理し、最適な答えを出したり重要なことだけを記憶したりする。これを「デフォルト・モード・ネットワーク」と名づけた。
 常にスマホを使っていると脳の中を整理する時間がなくなり「脳の中がゴミ屋敷のよう」になる。認知障害だけでなく「興味のないことには意欲がわかない」新タイプの「うつ」の原因にもなっているという。』

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3月10日日経夕刊に掲載された、オリックス山本由伸投手の記事から、
『不安を感じる中で個人的にトレーナーに師事。ウエートトレーニングに頼らず、ブリッジに様々な動きを組み入れた体操や、やり投げのような器具を使った遠投を練習メニューに採り入れた。体の深部から鍛え、全身の筋肉や骨の連動性を高めるトレーニングを継続してきたことが、今の飛躍につながっている。』

3月30日日経朝刊から、
『慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らによる研究チームが、箱根駅伝などで活躍する青学大陸上競技部(長距離ブロック)の男子学生48人と同年代の一般男性10人の腸内フローラの比較調査を行ったところ、学生たちには「Bacteroides uniformis(バクテロイデス・ユニフォルミス)」という細菌が一般男性に比べ、約10倍多く生息していることが明らかになった。学生のうち25人の3000メートルの記録を比べると、上位者ほどこの細菌数が多くなる傾向も分かった。』

3月29日日経夕刊から、
『ギターを弾く際に重要なのが、利き手で弦をはじく動作の「ピッキング」。この軌道や良しあしについて、腕時計のような形の装置を使ってパソコン画面上に表示する方法を、東京都在住のロックギタリスト、加茂フミヨシさんが考案した。「これまで説明困難だった『暗黙知』の技術を可視化でき、演奏習得の効率化につながる」と説明。ギターレッスンなどに活用したい考えだ。』

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3月23日日経夕刊に掲載された宮大工、小川三夫さんの記事から、
『「未踏に挑むからこそ、そこに知恵が生まれます。力のある人は力で物を動かそうとするので、力以上の物を動かすことはできません。力のない人はそこで知恵を働かせ、工夫をするから力以上のものを動かすことができるようになります。私はそのことの方が大切だと思います。飛鳥時代には材木を山から切り出して、現場まで運ぶだけでも大変なことで、多くの知恵を働かせなければできませんでした。」』

2023年6月12日 (月)

役所広司さん、シュタルケル、F.P.ツィンマーマン

第76回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した役所広司さんについて、6月7日の読売新聞朝刊に映画監督黒沢清さんの記事が掲載された。その中から、

『それにしても役所広司は不思議なスターです。日本映画の歴代の男性スターを思い出してみると、高倉健にしろ三船敏郎にしろ笠智衆にしろ、どんな作品でもみな演じるキャラクターは同じで、彼らはそのただ一種類の強烈な個性で際立った印象を観客に与え、それがスターの資質と呼ばれるものでした。ところが役所広司はそれを根底からひっくり返したのです。サムライから清掃員まで難なくやってのける彼の役柄の多彩さは、もちろんその並外れた演技力からくるものなのですが、それは本来バイプレーヤーの資質というべきものです。
 僕も役所さんの目つきが優しさから突然狂気に変わるところや、活力のある男が急に虚無の人へと豹変する瞬間を現場で何度も目の当たりにしていて、現代の日本人なら誰でも持つ弱さ、曖昧さ、不健全さといったものの的確な表現にいつも驚かされるのですが、そういったリアリティーはスターが演じる健全さや庶民性とは実は縁の無い要素のはずです。ところが役所さんは、複雑怪奇な人間の本性を、堂々たるスター性をもって体現することができてしまうのです。』

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確かに、高倉健さん主演の映画を観ると、高倉さんの存在感がその映画を占めていることを強く感じる。そして、その高倉さんの魅力を他の映画でも感じたい、と思うかもしれない。

最近はあまり映画を観なくなったけれど、洋画を観ていると、しばらくしてから、この俳優はあの映画のあの役を演じていた人だ、と気付いて驚くことがある。その時とはまるで違う今回の役を見事に演じていて、ぼんやりした僕はなかなか気付かない。

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以前、音楽プロデューサーの中野雄さんがラジオ番組でチェリスト、ヤーノシュ・シュタルケルを取り上げた時、ベートーヴェンやバッハや、様々なレパートリーを弾いても、演奏を聴くとすぐシュタルケルとわかる、と話され、印象的だった。彼独特の節回しにも言及されたと思う。
後に中野さんにお会いした際、そのラジオ番組のことを伺うと、何を演奏してもシュタルケルだとわからなければいけない、と本人が言ったことを教えてくださった。

シュタルケルに限らず、カザルス、フルニエ、トルトゥリエ、ロストロポーヴィチ、シャフラン・・・、そうした人たちの演奏を聴くと、一つのフレーズを聴くまでもなく、たった一音でその人と分かる時がある。

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少し前にM君と話していた時、ヴァイオリンのフランク・ペーター・ツィンマーマンが、演奏家は演奏する曲によってカメレオンのように変化する必要がある、ということを言った、と教えてくれた。

演奏の仕事に携わっていると、様々な曲を演奏する。作品に触れるごとに、作曲という営みのすごさを感じ、圧倒される。
残された楽譜に対して、演奏家の個性や主張はさほど大きなことではなく、楽譜には何が書いてあるのか、どのようにしたら楽譜に書いてあることを実現できるのか、そうしたことが大切ではないか、と思うようになった。

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2023年5月20日 (土)

2月の日経新聞から

2月をふり返ってみる。

2月6日日経朝刊から、
『東南アジアの最貧国、ラオスで不発弾による事故が後を絶たない。8000万発が残ると推定されており、政府が統計を取り始めた2008年から22年までに累計1000人以上の死傷者を出した。ベトナム戦争を終結に向かわせたパリ和平協定から50年を迎えた今もなお、ラオスの経済発展を妨げる「負の遺産」となっている。』

2月23日日経朝刊から、
『ロシアはウクライナ侵攻で、2022年3月までに占領した土地のおよそ半分を春以降に失った。欧米の武器供与を受けたウクライナが奪還した。ロシア軍と民間軍事会社の死傷者は20万人規模との推計があり・・・。
 侵攻は24日に1年を迎える。ロシア軍による支配・侵攻地域は現在、ウクライナの東部・南部を中心に全土の18%を占める。』

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2月8日日経朝刊から、
『国内で報告された新型コロナウィルス感染症の死者が7日、累計で7万人を超えた。1月上旬に6万人を超えたばかりで、1カ月で1万人増えた。』

2月12日日経朝刊から、
『人間活動の影響によって、生物多様性が損なわれ、感染症の脅威が増すとの報告が相次ぐ。ウィルスなどの病原体を持つコウモリの生息域が変化したり、病原体を媒介するネズミやダニが増えたりするからだ。』

2月1日日経夕刊から、
『福島大などの研究チームは紀伊半島に住む野生のニホンジカの遺伝子を調べた結果、このうち奈良公園のシカが独自の遺伝子型を保っていることが分かったとする論文を米哺乳類学会の学会誌で発表した。
 園内にある世界遺産・春日大社の神の使い「神鹿(じんろく)」として千年以上前から人間の保護を受け、集団を維持してきたことを示している。』

2月27日日経朝刊から、
『東日本大震災で津波が襲った仙台湾沿岸の干潟の生態系が、ほぼ震災前の姿に戻ったという。東北大学などの研究者の調査に延べ約500人のボランティアが協力。約10年間、生き物の採取を続け「巨大津波の自然界での意味」の一端を明らかにした。』

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2月19日日経朝刊から、
『80億人に達した人類の影響はあまりに大きかった。その活動で世界はプラスチックやコンクリート、温暖化ガスであふれかえり、地球の環境は激変した。人類の行き過ぎた振る舞いを地球史に記す必要があるとして、新たな時代「人新生(じんしんせい)」を定めるべきだとの声が強まっている。
 人類が残した爪痕は深い。イスラエルのワイツマン科学研究所は人類が生産した人工物の総量が生物の量を上回ったようだと2020年の英科学誌ネイチャーに発表した。』

2月1日日経夕刊から、
『米航空機ボーイングは31日、ジャンボ機「747」を米貨物航空アトラスエアに引き渡し、同機種の生産を終了した。ライバルの欧州エアバスも「A380」の生産を終えており、超大型機の時代が名実ともに幕を閉じる。』

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2月9日日経朝刊から、
『1964年の東京五輪・パラリンピックの開催に合わせて整備した道路や施設などのレガシー(遺産)に老朽化の波が押し寄せている。急ピッチで整備された数々の施設は今なお現役で、改修を重ねながら当時の姿を保っている。・・・
 「崩壊するシナリオに乗っており、科学的にはいつ崩壊してもおかしくない」。コンクリート工学に詳しい横浜国立大学大学院の前川宏一教授は羽田トンネルの現状について、こう指摘する。』

2月8日日経朝刊に掲載された関東学院大学教授、島澤諭さんの記事から、
『2023年度予算案は一般会計総額が114.4兆円と、当初予算としては初めて110兆円を超えた。税収は過去最高の69.4兆円を見込みながら、国債発行額は35.6兆円と依然高水準を維持する。政府は税収が増えても巨額の債務残高を減らさず、その分歳出を増やすだけで財政健全化は進んでいない。
 日銀が実質的な金融引き締めに転じるなか、毎年30兆円超もの新規国債発行を伴う赤字財政運営をいつまで続けられるのだろうか。』

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2月7日日経朝刊から、
『先進国で最も短い日本人の睡眠時間。・・・総務省の社会生活基本調査によると、新型コロナウィルス下の2021年に平日の睡眠時間が1976年の調査開始以来初めて増えた。・・・
 2021年の平日の睡眠時間は10歳以上男女の全国平均で1日462分(7時間42分)と前回の16年調査より13分増えた。』

2月14日日経朝刊から、
『総務省の社会生活基本調査によると、平日の1日のうち食事に充てた時間は平均96分だった。1日3食とすると1食あたり30分強。働いている人に限ると89分となり、調査が始まった1976年以降で最も短くなった。』

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2月20日日経朝刊に掲載された池上彰さんと、ノーベル賞受賞者スバンテ・ペーボ博士の記事から、
『ペーボ「新型コロナの重症化リスク要因には高齢者、既往症、男性などがわかっていました。でも、それだけでは説明がつきませんでした。ネアンデルタール人に由来する遺伝子があると重症化して亡くなるなどのリスクが2倍になることがわかりました。その遺伝子は欧州の人の約16%、南アジアの特にインドやスリランカでは最大50%の人が持っています。一方、日本や中国の人々にはほとんどないことが興味深いです」』

2月6日日経夕刊に掲載された小説家、高瀬隼子さんの記事から、
『自分で書いた小説を後で読み返してみた時、われながらこのシーンはいいな、このセリフや描写はよく思い付いたな、と感じる部分は、ほとんどが膝を曲げたときに書いた箇所だ。曲げれば曲げるほど、言葉が出てくるような気がする、というのはさすがに思い込みがすぎるかもしれないが、冷えたつま先を両手で包んで温めると、冷え切った一行の代わりに熱のこもった一文が書ける、気がする。脚と手はわたしの体でつながっている。』

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2月27日日経夕刊に掲載された東大寺別当、橋村公英さんの記事から、
『種をまき花が咲くまで早くて3年。8年ほどかかることもある。植物を前にすると人は観念的な時間ではなく、生物本来の時間に引き戻される。日常の中で大切にしているひとときだ。』

2月4日日経朝刊に掲載されたレオス・キャピタルワークス会長兼社長、藤野英人さんの記事から、
『カミュの『シューシポスの神話』が示す通り、賽の河原で石を積み上げているのが人生です。目標に達したと思った瞬間、スタートに戻る。無限の罰を生きることこそが無限の命であり、徒労の中に輝きがあるのだと思います。』

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2月7日日経夕刊に掲載された翻訳家、斎藤真理子さんの「銀行員の詩集」という記事から、
『読むたびに尽きない発見がある。そして随所に戦争の匂いが漂う。
「これが正しい事だと云つて / 戦争が起こつた / これが正しい事だと云つて / 終戦になつた」(「その眸」)
と振り返るのは住友銀行の深山杏子さん。この詩集には従軍、抑留、戦災、引き上げの記憶と共に、朝鮮戦争の勃発と日本の再軍備という現実が書かれている。』

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2月12日日経朝刊に掲載された詩人、和合亮一さんの記事から、
『筆を折って半年ほどが経った。一通の手紙が届く。「あなたの詩に心が動かされました。他にも掲載されているものがあれば、ぜひ」。それを読んでくれたのだ。困った。他に雑誌は無い。言い訳の返信を添えながら、捨てずにしまっていた大量の生原稿を丹念にコピーして送らせていただく。
 御礼の手紙が。「私は長距離トラックの運転手をしています。本日も新潟から雪道を戻ってきました。家に帰り、とっぷりとコタツに入り、すっかりと眠たくなるまで、詩をあれこれ読みふけるのが何より好きです」。丁寧な文字だ。「あなたの作品を繰り返し読んでいます。実は内容はあまり理解できてはいないのですが、とても元気が湧いてきます」。見つめる。穴が空くほどに。はらはらと見えない何かがこぼれそうになった。』

2023年4月22日 (土)

1月の日経新聞から

1月をふり返ってみる。

1月13日日経朝刊から、
『2022年までの8年間が記録上最も暖かかったことが複数の研究機関の調査でわかった。大気中の温暖化ガス濃度が記録的な水準に達しているためだ。』

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1月11日日経朝刊から、
『今シーズンの高病原性鳥インフルエンザによる鶏などの殺処分対象数が10日、全国で計約1091万羽となり、1シーズンとして初めて1千万羽を突破した。』

1月8日日経朝刊から、
『北海道大学などの研究チームは、2022年4月に見つかった北海道内のキタキツネとタヌキから高病原性鳥インフルエンザウィルス「H5N1」を検出した。哺乳動物から見つかったのは国内では初めてという。』

1月7日日経朝刊から、
『国内で6日、新たに20万人超の新型コロナウィルス感染者が報告され、累計で3千万人を超えた。2020年1月に国内で感染者が初めて確認され、約3年で人口の4分の1近くが感染した計算になる。』

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1月4日日経朝刊から、
『米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2023年の世界の「10大リスク」を発表した。1位に「Rogue Russia」(ならず者国家ロシア)を挙げた。』(2位「最大化する習権力」、3位「テクノロジーによる社会混乱」)

1月18日日経朝刊から、
『2020年に世界の貧困層の比率が25年ぶりに上昇したことが国際非政府組織オックスファムの経済格差に関する報告書で明らかになった。21年末までの2年間で上位1%の富裕層が得た資産が、残る99%の獲得資産の約2倍にのぼるとも指摘した。』

1月8日日経朝刊に掲載された、「分断の先に」という特集記事から、
『なぜ人々は刹那的な主張と政策になびくのか。世界価値観調査で「他者(周囲)を信頼できるか」の問いに北欧諸国は6~7割がイエスと答えた。北欧より富が偏る米国や日本でイエスは4割を切り、ポピュリズムに流れたチリは12%だ。』
『代償は大きい。独キール世界経済研究所のマニュエル・ファンケ氏が20世紀以降のポピュリスト政権を調べると、政権誕生から15年後の1人当たり国内総生産(GDP)は各国平均で、従来の成長トレンドが続いたと仮定した場合に比べて10%も下回っていた。』

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1月10日日経夕刊から、
『災害や北朝鮮のミサイル発射といった緊急時にSNSに虚偽の情報が投稿される例が後を絶たない。人々の混乱に拍車をかける悪質な行為で、消防や救急など防災関係機関の業務を妨げれば罪に問われる可能性がある。』

1月30日日経夕刊から、
『第2次大戦中のナチス・ドイツによるホロコーストについて、オランダの若者世代の約4人に1人が「作り話」だと認識していることが、米NPOの調査で明らかになった。』

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1月1日日経朝刊から、
『総務省は31日、2023年1月1日時点の人口推計を発表した。・・・このうち18歳の新成人は112万人(総人口に占める割合0.89%)と、少子化を反映して過去最少だった。』
『「おひとり様」が増えている。国勢調査(2020年)によると単身世帯は38%を占め、ひとり暮らしは現代日本で最も多い世帯の形となった。』

1月31日日経朝刊から、
『人口の東京への集中が再加速している。総務省が30日発表した2022年の住民基本台帳人口移動報告では、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3万8023人となり、超過幅は3年ぶりに拡大した。』

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1月11日日経朝刊から、
『東北大と東京大、京都大の研究チームは10日、南海トラフ沿いで巨大地震の発生後、1週間以内に同規模の後発地震が起きる確率は2.1~77%と、平時の99~3600倍に高まると英科学誌に発表した。』

1月15日日経朝刊から、
『かずさDNA研究所などのチームは、不老不死で知られるベニクラゲのゲノム(全遺伝情報)を解読した。通常のクラゲは老いると溶けて死んでしまうが、ベニクラゲは大人になっても若返る。若返るときに働く遺伝子を解析して、老化の解明に役立てる。』

1月11日日経夕刊から、
『アトピー性皮膚炎のかゆみは、皮膚組織で作られるタンパク質が知覚神経を刺激して引き起こされると、佐賀大学や富山大学などの研究チームが10日、発表した。このタンパク質の作用を抑制すれば、かゆみを抑える効果も判明。』

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1月18日日経夕刊に掲載された、「無意識が見つけ出す物語り」という記事から、
『「わたしはプランするのではなく、潜在意識をさぐって物語を見つけ出す」(「夜の言葉」、1979年)とル=グウィンは言う。真の物語は頭で作り出すものではなく、人類の古い集合意識から出てくるものだ。彼女は老荘思想にひかれていたし、両親が文化人類学者であったこともあり、「無意識」の根源的な力こそ、現代のファンタジーが、テーマとして見直すべきものとした。』

1月11日日経夕刊に掲載された、クライミング、森秋彩(もりあい)さんの記事から、
『「クライミングは正解がなく、自分らしさを登りで表現できる。指先や足先までしっかり理解していないといけないから自分と向き合えた」。』

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1月20日日経夕刊に掲載された、ジャパンディスプレイ会長CEO、スコット・キャロンさんの記事から、
『日本のバスや鉄道といった公共交通機関をとても気に入っている。車内で感じるのは日本社会のコミュニティだ。乗るとたちまち人々の小さな絆のようなものを感じる。
 手ごろな値段で、誰もが格差なく良い移動サービスを受けられる。その平等さが日本らしい。駅や車内は世界一清潔で、何より治安が良い。子どもを一人でバスや電車に乗せられる安心感も日本ならではだ。』

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1月28日日経朝刊に掲載された画家、野見山暁治さんの記事から、
『「絵描きを職業とは考えていないんです。自分が世の中に貢献して、それによって報酬をもらうのが仕事だとすれば、僕は人を喜ばすために絵を描いていないし、自分の絵に反響があろうとなかろうとかまわない。人や世の中を対象に仕事をしていないのに、それを職業といえるのだろうか」。そう考える野見山さんは、「絵は生涯の道楽」と語る。』

2023年3月12日 (日)

12月の日経新聞から

12月20日日経朝刊に掲載された、独ポツダム気候影響研究所長ヨハン・ロックストロームさんの記事から、
『気候変動は制御不能な領域に入りつつあることが、科学的根拠とともに明らかになってきた。温暖化の影響で起きる熱波、豪雨、病気の広がりなどは適応できる限界を超え、人々に移住を迫るところまできた。
 気温の上昇は、元に戻らない「ティッピングポイント(転換点)」に急速に近づいている。・・・』

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12月29日日経朝刊から、
『新型コロナウィルスに感染する確率と、飲み会やイベントなどへの参加頻度にはどのような関係があるのか。日本経済新聞などが約3万人のデータをもとに分析したところ、飲み会にほとんど参加しない人の感染確率が6.3%だったのに対し、「週1~2回以下」とほどほどに飲みに行く人の確率は8.4%で、差は約2ポイントだった。』

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12月22日日経朝刊から、
『会計検査院は21日、2021年の東京五輪・パラリンピックの開催経費が大会組織委員会の公表額より2割多い1兆6989億円だったとの調査結果を国会に提出した。大会と関連する「関連経費」を合わせると約3兆6800億円になる。国はこれまで経費の総額を公表してこなかった。』

12月28日日経朝刊に掲載された、「何のための東京開催か?」という記事から、
『現時点で開催の意義を問われると、日本の民主主義が機能していないことを教えてくれた、としか答えられない。この国では合理的で民主的な合意形成は働かず、既得権益を持つ組織や人が勝手に利権を分け合う旧態依然としたメカニズムが機能している。オリパラをめぐる汚職や談合、公費の不透明な使われ方は、その現実を社会に突き付けている。』

12月31日日経朝刊に掲載された、IBMフェロー浅川智恵子さんの記事から、
『 ー なぜ日本では多様化が進まなかったのか。
「根が深い。長年、高齢男性中心で意志決定してきた構造問題だ。民族的な多様性が低い社会という歴史的背景もある。教育の問題も大きい。日本は障害児が特別な支援学校に行く習慣的な制度がある。先進国では異質だ。』

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12月18日日経朝刊から、
『名古屋大学の依田憲教授と竹内一郎教授らの研究チームは、海鳥の一種であるオオミズナギドリが台風の目に向かって飛ぶ行動を発見した。あえて台風の目に向かって飛ぶことで、陸上に吹き飛ばされるリスクを下げている可能性がある。』

12月25日日経朝刊から、
『東北大学の千葉聡教授や大学院生の千葉稔さんらはゲノム解析と古文書の分析から、ニホンヤモリが約3000年前に中国から渡来し、関東に定着したのは200年前以降にすぎないと解明した。日本各地のヤモリを解析し、社会の発展と共に生息域が広がった様子も明らかになった。』

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12月9日日経夕刊から、
『書店のない市町村が全国で26.2%に上ることが出版文化産業振興財団の調査で8日、分かった。全国1741市区町村のうち456市町村が書店の空白域となっている。』

12月13日日経夕刊から、
『通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に学習や行動に困難のある発達障害の可能性があることが13日、文部科学省の調査で分かった。2012年の前回調査から2.3ポイント増えた。35人学級であれば3人ほどの割合となる。』

12月23日日経夕刊から、
『世界保健機関(WHO)は19年「ゲーム障害」を依存症の一種と認定した。ゲームをしたい衝動を抑えられず、問題が起きても続けてしまう。世界の有病率は3%程度と推定する研究があり、男性に多い傾向が報告されている。』

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12月16日日経朝刊に掲載された、サッカー、ワールドカップに関する中村憲剛さんの記事から、
『フランスの強みのひとつは、鼻が利く選手が多いことだ。チャンスとピンチの芽をすばやく嗅ぎあて、人数をそろえて事にあたる共同作業のみごとさがモロッコを一枚しのいでいた。』

12月16日日経夕刊に掲載された、鏑木毅さんの記事から、
『私がはっきりとゾーンを感じたのは2009年のUTMB(ウルトラ・トレイル・デュ・モンブラン)だけだ。
 通常、100マイル(約160キロメートル)レースの最終盤のきつさはこの世の地獄とも思えるほど。だがこのときは違った、まるでドローン映像で自分自身を客観的に見ているかのような、不思議な光景が頭をよぎり、時折、誰かに背中を押されている感覚もあった。
 そして「このままどこまでも走り続けられる」と思えるほど、苦しみのさなかにあってなんともいえない幸福感が身を包んだのだった。』

12月30日日経朝刊に掲載された、為末大さんの記事から、
『現代の若者は子供のころからインターネットが身近で、自分たちが世界でどの位置にいるかを相対的に意識できた初めての世代だ。過去からの莫大なデータにも容易にアクセスできるなかで育ってきている。こうした時代や環境が、常識や既成概念を超えて圧倒的な結果を残す若者が続々と登場する背景にあるのではないか。』

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12月25日日経朝刊に掲載された、東松照明さんの記事から、
『写真家は、医師のように治療せず、学者のように分析もせず、神父のように支えない。落語家のように笑わせもせず、歌手のように酔わせない。ただひたすら見るだけ。見ることと選ぶことに終始するのが写真家である。』

2023年1月 6日 (金)

指揮者の言葉

昨年12月の日経新聞連載「私の履歴書」はリッカルド・ムーティさん。毎朝、新聞を手に取ることが楽しみだった。とても興味深かった言葉を下記に。日付は掲載日です。

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『私はというと次第に音楽に魅せられ、楽器の関心もヴァイオリンからピアノに移っていった。なぜピアノが面白いと感じたかというと、ピアノの場合、右と左でメロディーと伴奏両方を弾けるからで、子供心にはこちらの方がより完璧な楽器と思えた。』(12/7)

 

『ヴィターレ先生の教えはこうだった。楽譜の要点はフレーズにあり、フレーズには自然な決まりを含んでいるので、速度記号を参考にしながらどこに頂点があるのかを見いださなければならない。自分はこう感じるからと勝手に解釈し演奏することは御法度だった。』(12/9)

 

『偉大な指揮者アルトゥーロ・トスカニーニは「腕は頭脳の延長である」と言った。指揮者ミトロプーロスは、右腕はリズムをコントロールし左腕は「心」を表現する、つまり2本の腕が自立することが求められると語った。
 指揮者はどうあるべきか、これは難しい問題だ。・・・体を大きく使って激しく感情豊かで情熱的に表現する指揮が素晴らしいと思われることがある。
 私の場合、腕の振り方は最初から自然にできた。それより指揮者としての基礎をつくるうえで最も重要なのは作曲の勉強ではないだろうか。作曲家の視点からスコアを分析することにつながるからだ。』(12/9)

(音色、という言葉があるけれど、ムーティさんの指揮は色が見えるようだった。体の前で2本の腕が動いているだけなのに、どうして色が見えたのだろう。)

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『ヴェルディ音楽院で師事することになったヴォット先生はよそよそしく、冷たい感じがした。・・・

 ヴォットは、4分の4拍子はこのように振り、・・・と振り方の基礎を教えてくれた。そして笑いながら「これで授業はおしまいだ」と言った。「例えばブラームスの交響曲第4番のように、有名な出だしをどのように振ったらいいのか、どんな音色でどんな意味を持たせるのかなどは教えることはできない。自分で見つけ出さなければならないものだ」。
 ヴォットの貴重な教えは指揮ではオーケストラに「対抗」してはならないということだ。指揮者はしっかりと稽古をして演奏準備をしたら、音楽の流れに逆らうような見直しはしてはいけないというのだ。』(12/10)

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『フィレンツェでの演奏会を機に友人となったリヒテルは、私がヴォット先生の影響を受けて暗譜で指揮するのを見て「なぜ暗譜するのだい。目は使わないのか」と言ったことがある。この一言で私は必ずスコアを譜面台において演奏するようになった。スコアは何年読み続けていても本番に新たな発見をもたらしてくれることがある。』(12/13)

 

『ここでもう一人、指揮者の思い出を記そう。カルロス・クライバー。私の真の友人である。・・・私は彼ほど音楽に関する広い知識を持った指揮者を知らない。一度、彼はこう嘆いたことがある。「楽譜に書かれているものを音にすると、何か魔法が失われるような気がするね」。』(12/20)

 

『古典作品でも現代曲でも初めてスコアを開くのは、ラヴェンナの書斎にある長年愛用してきたシンメルのピアノの前だ。スコアを開くと新しい恋人にでも出会ったかのようにドキドキする。・・・冷静に曲の構造、ハーモニーなどをじっくり分析し、解釈が生まれる。それまでに通常数カ月はかかる。
 次はオーケストラの前でそのアイデアを伝えるべく努める。テンポなどが正しいかチェックし、場合によっては変えるべきかどうかを判断する。同じ曲でも5年経つと解釈が変わるときもある。それは私という人間自身が変わっているからだ。』(12/25)

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『・・・、フィラデルフィアにいた私に電話がかかってきた。
「マエストロ、私を探していると聞いたのですが」。その不思議な魅力を持つ声にしばし返事ができないでいると、「マリア・カラスです」。続けて「私のことを考えてくださってうれしいです」。さらにあの「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」のヴィオレッタのセリフそのままに「でも、もう遅いです」と言った・あの声音は今でも鮮明に耳に残っている。
 彼女については多くが語られているが、私が強調したいのは歌手としての姿勢だ。彼女はオペラのリハーサル全てに立ち会ったという。自分の出番がないときでも劇場に顔を出し、オーケストラだけの練習も聴きに来ていた。スター性のある歌手は多忙のあまり、自分が歌うシーンがない稽古には来ない人が多い。』(12/26)

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『オーケストラの奏者ほど練習、忍耐、献身と犠牲を求められる職業はないだろう。オーケストラというのは一つの社会であり、団員は互いに尊敬し合わなければ美しいハーモニーは生まれない。指揮者は絶えずそのことを念頭に置かなければならない。』(12/28)

 

『コレペティトールは伴奏者ではない。優秀なピアニストであるのみならず、全ての役柄と台本の言葉を理解し、歌手が指揮者の意図する表現で歌えるように準備をするのが仕事である。
・・・オペラの場合は音楽より先に言葉があり、単に発音が正しければいいというわけではない。台本の意味を奥深く理解し、指揮者として歌手とともに音楽にすることが大事なのだ。歌手と一緒にフレーズ作りをし、呼吸のメカニズムを勉強していくことが要求される。』(12/29)

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『日本人演奏家はすでにベルリン、ウィーン、シカゴなどでめざましい活躍をしている。春祭オーケストラの奏者は皆、繊細な精神の持ち主で、私の言うことを真剣に聴き、理解するように努力しているのがわかる。かれらはドイツやフランス、イタリアの伝統を学ぶ必要もあるが、コピーではなく、彼らの道を見つけるべきなのだ。何より日本人の「詩的な世界」を大事にしてほしい。心からそう思っている。』(12/30)

 

『私の今までの人生は勉強の連続だった。毎日数時間はピアノに向かい、譜読みを繰り返してきた。知識を広めるための読書も欠かせない。・・・
 22年も残りわずか。ウクライナ侵攻はますます深刻さを増している。新型コロナもいまだに収束していない。この困難な時期に心の拠り所となるのが芸術だ。私はこれからも自分が納得いくまで勉強し続けるつもりだ。』(12/31)

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2022年12月15日 (木)

11月の日経新聞から

11月21日日経夕刊から、
『世界の新型コロナウィルス対策を一変させたオミクロン型の出現が報告されてから、25日で1年となった。オミクロン型は免疫をすり抜ける性質によって感染力が強く、爆発的に拡大した。・・・600種以上の派生型が確認されているが、共通して免疫をすり抜ける性質が強まる「収れん進化」が進んでいる。』

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11月25日日経夕刊から、
『国際行方不明者機関(ICMP、本部オランダ・ハーグ)の欧州担当の高官は24日、ロシアの軍事侵攻を受けてウクライナで1万5000人超が行方不明になっている、と明らかにした。』

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11月24日日経夕刊から、
『ウクライナの原子力企業エネルゴアトムは23日、ロシアによる電力インフラへの攻撃に伴い、国内にある4原発が外部電源から遮断されたと発表した。放射線量に異常は出ていないという。』

11月17日日経朝刊から、
『北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランド領内に15日にミサイルが着弾し2人が死亡した事件は、ウクライナでの戦闘が偶発的に全面戦争の引き金になるリスクを浮き彫りにした。』

11月1日日経朝刊に掲載された、英フィナンシャル・タイムズの記事から、
『ロシアのウクライナ侵攻によって高騰したガスや電気の料金を払えなくなった何百万人もの東欧の人々にとっては、冬をなんとか乗り切ることが最優先となっている。
 ハンガリーなどでは十分な暖房を維持できない「エネルギー貧困」が大幅に増えると予想される。一方で、環境に悪影響を与える燃料の使用が増えることで、温暖化ガス排出量が大きく増加する懸念も出ている。』

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11月16日日経朝刊から、
『国連総会で14日、ロシアにウクライナ侵攻をめぐる損害の賠償責任を求める決議が94カ国の賛成で採択された。棄権国は73カ国に上り、ロシアによるウクライナ4州の併合を無効とした10月の総会決議から倍増した。』

11月24日日経朝刊に掲載された、イアン・ブレマー氏の記事から、
『ロシアはウクライナで核の使用に踏み切るのか ー 。西側の情報当局が絶えず目を光らせ、西側の首脳が慎重に検討を重ねている問題だ。ロシアのプーチン大統領はその権利を留保していると警告している。威嚇に思えるとしても核戦争の脅威は1962年のキューバ危機以降、最も高い。』

11月17日日経朝刊に掲載された、ロシア国立高等経済学院教授ドミトリー・トレーニン氏の記事から、
『ウクライナ軍事侵攻をめぐるロシア国内の反応は、エリート層と一般市民の間でまったく異なる。
 エリート層は海外に保有していた富や財産を失った。これまで順調だったビジネスや生活スタイルも続けられなくなった。大半が不愉快な思いをしている。一時的にせよ、国外に去った人も多い。
 一般市民は正反対だ。米欧はプーチン大統領や側近に限らず、ほぼ全国民に影響を与える対ロ制裁を発動した。予測をはるかに超える厳しさだ。多くの国民はロシアとウクライナの戦いではなく、ロシアと米欧の衝突だとみなし始めた。その結果、まるで戦時下のように国民が団結し、国家指導部を支える雰囲気が芽生えている。』

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11月15日日経朝刊から、
『世界の人口が15日、80億人の大台に到達する。国連の推計によると70億人に達した2010年から12年間で10億人増えた。出生率の低下などで人口増加率は鈍化が進み、20年に戦後初めて1%を下回った。』

11月16日日経夕刊から、
『痛風やリウマチ、がんや外傷で起きる「持続する強い痛み」の原因となるたんぱく質を特定した、と和歌山県立医大と北海道大、兵庫医大のチームが15日、発表した。』

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11月16日日経夕刊から、
『埼玉大学と基礎生物学研究所のチームは、触れると葉をたたんで「お辞儀」するマメ科の植物オジギソウが、傷を付けられると信号の伝達で葉を動かし、昆虫に食べられることを防いでいるとの研究結果を公表した。』

11月6日日経夕刊から、
『兵庫県立コウノトリの郷公園は15日、福井県越前市から6月に巣立った国の特別天然記念物コウノトリの雌1羽が、中国・浙江省で確認されたと発表した。
 ・・・
 飛行距離は少なくとも1600キロとみられる。』

11月24日日経夕刊から、
『北太平洋のアカウミガメの回遊ルートを解明するため、名古屋港水族館が米国やニュージーランドなどの研究機関と共同で、小型送信機を付けたカメをメキシコ西部バハカリフォルニア沖の海上から放流する調査を来年4月に始める。約5年間の予定。
 日本沿岸でふ化したカメが米西海岸沖まで回遊することは分かっていた。』

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11月29日日経夕刊から、
『「家族の一員」として定着してきたペットの犬。何を思っているの、どうすれば病気になりにくいの。飼い主の疑問はつきない。・・・
 心を開いた人にはしっぽを右方向に片寄らせて振る ー 。そんな研究結果を、中国科学院の研究チームが今夏発表した。』

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11月21日日経朝刊から、
『企業がポストコロナ時代の働き方を探るなか、オフィス街に戻りつつあるのはどんな人か。日本経済新聞が携帯電話の位置情報と趣味や職業などの属性を分析したところ、「お酒好き」な人は朝から出社する傾向が強いことが分かった。』

11月21日日経朝刊から、
『子どもがマンションの高層階から転落して死亡する事故が後を絶たない。・・・
 高層集合住宅に住む子どもの健康に詳しい帝京大学の三木祐子准教授は、子どもの転落事故が起こる背景に高層マンションに住む子育て世帯の増加も関係しているとの見方を示す。幼い頃からタワーマンションなどの高いところで生活していると、高所への怖さを感じにくい「高所平気症」と呼ばれる心理状態になるとして注意を促している。』

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11月1日日経朝刊に掲載された、プロゴルファー宮里優作さんの記事から、
『・・・プロになると経験値が増え、いろんな攻め方も頭に入ってくる一方、成功体験は薄れ悪いイメージが重なってくる。「行け行け」のアマにはいいイメージしかない。蟬川君もゲームプラン通り4日間、得意のドライバーで攻め続けた。』

11月24日日経朝刊に掲載された、亀山郁夫さんの記事から、
『そのゲルギエフが、今回の侵攻ではプーチンとの「癒着」を問題視され、欧米の楽団から完全な締め出しにあった。・・・シーズン開始前の8月には、ウラジオストクの音楽祭に登場し、記者団の質問にも明るく答えている。
「世界の政治はどうあれ、国の偉大さを決定するのは常に文化的な過去、現在、未来だ。ロシアにはすでにその文化的未来がある。早晩、文化が政治に影響し、前面に出てくる」。曖昧ながらも、メッセージが隠しもつ微妙な「距離感」に意を強くした。最後は文化が政治に勝つ、と宣言しているからだ。』

11月16日日経夕刊に掲載された、藤原辰史さんの記事から、
『讃えるべきことが無数に転がっているのに見て見ぬふりをし、憎悪を量産する国家や政党や会社や人間を見て疲弊する日々、本をめぐって連なっていく人たちの知性と誇りに触れ、心を立て直すことができた。』

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